平成27年度は,踵の形状に合わせて超音波の送信・受信方向を制御する手法について検討を行った.送信・受信用振動子を対向させて計測を行った場合,透過波の減衰量は100~120 dBと大きく,踵内の音波伝搬時間を計測することが困難であった.平成26年度の研究では,踵の形状をあらかじめ3Dスキャナで計測し,その側面の傾斜に合わせて振動子の角度を調節することで,透過波の計測を行った.しかしながら,実際のQUS装置内に新たなセンサシステムなどを組込むことは現実的ではないため,従来の超音波送受信システムを用いて踵の形状を計測しなければならない.そこで,送信・受信用振動子から時間幅の短いパルス波を送信し,踵の表面と振動面との間に生じる多重反射からそれらの角度および距離を計測する手法について検討を行った.踵・振動子間の多重反射は,それらの角度が平行になった時に最も反射間隔が短く,反射回数も多くなると考えられる.そこで,振動子の角度を走査しながら多重反射を計測することで,踵の表面と振動面が平行になるように調整した.その後,踵の表面で生じる超音波屈折によって,踵内の超音波伝搬方向が水平方向になるように振動子の角度を調整した.以上の処理を送信・受信側の振動子で行うことで,減衰量が70 dB程度の透過波を受信し,踵内の音波伝搬時間を計測することが可能となった.
|