耳管機能検査について装置も発売されているが,治療と診断を兼ねた耳管通気法が一般的に行われている。しかし,耳管通気法では施行する医師にしか聴診されないため耳管通気音がデータとして残されないことや、診断が医師の聴覚的判定に任されており客観性に乏しいなどの短所がある.そこで我々は耳管通気音を客観的に評価するシステムの開発に着手した。平成25年度までに患者の外耳道から耳管通気音を録音し,リアルタイムで聴診も行えるシステムを開発した。さらに、耳管への圧力センサおよび環境音を集録できるシステムであった。 平成26年度までにはセンサ部の改良を行った。その結果S/N比は18dB改善した。その耳管通気音採取装置を用いて,正常、耳管狭窄症、滲出性中耳炎患者の耳管通気音を92耳データを採取した。それらを時間ー周波数解析によって解析した結果,5kHz以上の成分には特徴は含まれないであろうことが示唆された。採音した耳管通気音の中で,59の音(正常:22耳,耳管狭窄症:18耳,滲出性中耳炎:19耳)を最大エントロピー法によるスペクトル解析,各種スケール変換した特徴ベクトルを自己組織化マップに分類させた。なお、一つ抜き交差法によるオープンな試験により評価した。スペクトルを線形周波数軸で平均化した結果では,正常データの一部が正常群から外れていたが,一方メルスケールを用いて平均化した結果では,一つの塊を形成していた。ゆえに,メルスケールを用いた効果が得られた。また,スペクトルを正規化する効果について調べた結果,正規化を行った方が,つまり,スペクトルの形状を学習させた方が良好な結果が得られた。
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