研究課題/領域番号 |
25750186
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
森田 実 山口大学, 理工学研究科, 助教 (80510685)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アクチュエータ / センサ / 血栓治療 / 超音波 / 粘弾性計測 |
研究概要 |
脳や心臓等の微小な血管が血塊により閉塞されてしまう血栓症,塞栓症といった病の治療には,血管内の状態把握と素早い血塊の除去が重要である.これまでの治療診断デバイスでは小型化により出力が低下し,単一のデバイスで治療と診断を行えるものは少ない.本研究課題はこれらの問題を解決する為に,サイズの制限が少ない生体外に大型のセンサとアクチュエータ双方で利用可能な圧電素子を設け,発生した弾性波エネルギをワイヤを通して病変部周辺に伝播し病変部において振幅の大きな曲げ方向の振動へと変換する新しい構造を設計し,血液中で動作する小型撹拌・診断デバイスの開発を目指す.本年度ではワイヤを繋ぐ接続部の設計および人体血管模型を用いた駆動実験を行った.また,FBGを用いた血腫硬さ計測法の試験検討を行った.接続部の設計によりワイヤへの振動の伝播効率が向上し,期待した振動モードを発生させられることが確認出来た.また,ワイヤデバイスが受ける曲げおよび接触負荷における振動モードの変化を観察した.観察の結果0.8mmのワイヤでは半径5cm,180度の曲げ負荷を与えても期待した振動モードが発生することが分かり,カテーテル挿入訓練用のシリコン人体血管模型を用いて挿入実験から,大動脈弓より頸動脈までの曲げ負荷および接触負荷でも期待した振動モードを発生させることに成功した.さらにWDMフィルタを用いたFBG高速ひずみ計測法を採用し,小型高速高精度にデバイスの曲げ振動によるひずみを計測することで,ヤング率316N/m2~335N/m2の模擬血腫の粘弾性を判別することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では当初予定していたアクチュエータからワイヤへの振動伝播効率の改善と血液粘性計測法をワイヤ型へ応用するための基礎試験を行うことができた.その結果,これまでワイヤ型では見ることのできなかった縦弾性波を伝播してワイヤ先端のみで曲げ振動を発生する期待した振動モードを発生させることに成功した.また現状ではワイヤ型に搭載はしていないが,センサにFBG光ファイバを用いることによる計測法の検討も行い,ワイヤ型に搭載可能なサイズで高速にひずみを観測し,血腫の硬さを十分に判別可能な精度を得ることに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度はワイヤとアクチュエータの伝播効率を向上させ期待していた振動モードを発生させることに成功した.しかし,現状では加工が容易なアルミ製のホーンを用いているため発生力が十分ではない.そこで,次年度以降はホーンの材質や形状の再検討を行い発生力の向上を目指す.また,FBG光ファイバを用いた計測法が確立できたためワイヤ型に搭載し,引き続き本デバイスの性能を検証していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた人体模型を用いた本デバイスの検討に関して研究室所蔵の装置で一部代用可能であったため本年度使用額を少なく済ませることができた. 余剰分は次年度以降の実用化試験において,デバイスの完成度を高める目的で使用する計画である.
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