本研究では,非言語的な情報の保存,共有,理解法として医師の描くシェーマが非常に重要な役割を果たしていることに着目し,先天性心疾患を対象として,視覚情報(シェーマ)と文字情報(診療情報)とが結合するデータベース構築に必要な技術の研究開発を行い,シェーマを介し,先天性心疾患患者の様々な情報を統合的に扱うことができることを調査・検証する. データベースの実現のためには,視覚情報(シェーマ)と文字情報(診療情報)を簡便に相互連携させることが必要である.そのため,本研究ではXMLでのベクトル画像記述言語であるScalable Vector Graphics(SVG)で記述された,ベクトルシェーマを用いる.部位別に構造化されたベクトルシェーマを用いることで,個々の疾患名などの診療情報を紐付け,形態異常を視覚的に表現しながらデータベースとして格納することが可能となる. 平成26年度は,電子カルテに記載された診療情報の一部と,シェーマデータベースを統合させた先天性心疾患の患者情報データベースの試作を行い,小児循環器専門医の協力のもと,その有効性を調査・検証した.その結果,シェーマと疾患名の連動性が向上し,頭の中にある過去症例を疾患名によって少し変化させれば簡単に再編集できる,また,シェーマと疾患名を連動させることによって,後進の教育にも役立つことがわかった. ベクトルシェーマを介したデータ連携によって,先天性心疾患患者のシェーマ及び疾患名が整理保存され,データベース化できる可能性が示唆された.開発・試作したシステムは有用であり,本システムはシェーマを介し,先天性心疾患患者の様々な情報を統合的に扱うことのできるシステムであると考える.
|