研究実績の概要 |
1.研究期間内に明らかになったこと 1)収集データ数は8施設で1,099件であった.健康関連QOL尺度(EQ-5D-5L,EQ-5D-3L,HUI3)における全項目,項目別の測定特性(情報量,困難度,識別力)が明らかになった.測定特性の情報量は値が高いほど測定精度が高いことを示し,困難度は低い値を示すと容易に回答しやすい項目,高い値を示すと回答が困難な項目であり,識別力は高い値を示すほど同項目内での選択肢の識別力が高いことを示す.情報量はEQ-5D-5Lで22.5(困難度-4.83~1.42,識別力0.96~6.69),EQ-5D-3Lで13.1(困難度-11.30~3.57,識別力0.51~3.91),HUI3で8.7(困難度-3.41~1.32,識別力0.97~4.58)を示し,3つの尺度は全て情報量が多く,脳血管疾患患者に用いることができるが,その中でもEQ-5D-5Lが最も精度が高いことが証明された.また,項目によって困難度および識別力が異なることが分かった. 2)EQ-5D-5Lにおいて,脳血管疾患の各病型(脳梗塞,脳出血,くも膜下出血)で健康関連QOLに影響を及ぼす因子が明らかになった.脳梗塞では障害重症度,整容,移乗,脳出血では日常生活活動全般,排尿,食事,くも膜下出血では日常生活活動全般が健康関連QOLに影響を及ぼす因子であった. 2.今後の研究の展開 1)EQ-5D-5L,EQ-5D-3L,HUI3という各尺度の検証結果を基に,今後進められる様々な臨床経済評価に対して,感度分析を行う際の手がかりとし,結果に対する解釈や限界などを考察する.また,脳血管疾患以外の疾患での測定特性を調査し,疾患による相違を明らかにする. 2)検証結果を海外のものと比較することにより,民族間の比較や翻訳における程度副詞の問題について議論する.
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