研究課題/領域番号 |
25750197
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
橋本 泰成 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80610253)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 書痙 / 脳波 / BMI / BCI |
研究概要 |
初年度では、ブレイン・マシン・インターフェース(BMI) を利用した皮質興奮性を下げる訓練方法を治療法として確立するために、以下の研究項目を実施した。 (1) 書字動作に関する物理量の計測 予備実験では実際に紙に字を書いてもらい、その字の歪み度合いなどを訓練前後で比較できた。しかしながらこの評価だけでは歪みが少なくなった要因の特定は難しい。また患者の意見を聞くと、書字動作時にペンが落ちそうになるなど保持力のコントロールが難しいこともわかった。 そこで保持力が書字に与える影響を調べるために、紙の代わりにデジタルペンタブレット を使用して書字スピードと筆圧を計測するシステムを作成した。このシステムにより書字座標と筆圧を1秒間に200回デジタルデータとして記録が可能となった。筆圧は1 gから計測でき800段階で筆圧レベルを計測することができる。本研究にこの計測システムを組み込み、脳波や筋電図と合わせて、書字データを分析することが可能となった。 (2) 短期間の訓練効果と効果の持続時間の計測 訓練による書字能力の変化が一日でおこるのか、数日を要するのかについてはよくわかっていない。そこで 1 回の訓練の前後および数日後に(1)の評価をおこない即日効果とその持続性を調べた。 書痙患者一名での3回分の結果では、訓練によって15%ほど平均筆圧が下がったことがわかり、健常者のデータと近いものになったことが明らかになった。これは即日の効果であるが、14日間のインターバルを設けて再度計測したデータと比較すると、即日効果は高いものの14日間のインターバルによってその効果は80%ほど減弱することも明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の目的であった(1) 「書字動作に関する物理量の計測」については、筆圧とペン先の2次元的な情報をディジタルで取得するシステムができ、書痙患者での計測も行えたこと、また(2)の「短期間の訓練効果と効果の持続時間の計測」については、全解析はまだ終了していないが、書痙患者での継続的な訓練と計測を終了したこと、上記二点の結果よりおおむね研究は順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り「コントロール訓練との比較」を実施する。 予備実験では、訓練を開始し、平均 3 週間に 1 回、一回につき 2 時間ほど BMI システムを利用したところ、筋電図の分析から、手関節における不随意な共収縮が弱まったことが示唆された。また字の歪みが少なくなり、安定性が向上した。 この結果が、よい治療法だと患者が信じ込む事による改善(プラセボ効果)であったという解釈の余地をなくすことは信頼性を高めるために重要である。 このプラセボ効果を除外するために、正しい視覚フィードバックを使う期間と、偽のフィードバックを使う期間を設けて長期の訓練を実施する。被験者を訓練群とコントロール群とに分けて実施することは倫理的に難しいが、このような同一被験者内で訓練期間とコントロール期間の能力向上率を比較することは可能である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ当初の予定通りの支出結果であり、次年度に開催される学会があること、消耗品等の保持期限が1年以上ないことが理由としてあげられる。 次年度は国際学会で研究の成果を発表し、計測や臨床応用も計画しているので、旅費やその他の予算を多めに使用する計画である。
|