最終年度では手関節の伸筋群と屈筋群不随意な共収縮が弱まった効果について、患者が良い治療だと信じこむことによりおきる改善(プラセボ効果)ではないことを示すことを目的として研究を進めた。このプラセボ効果を除外するために正しい視覚フィードバックを使う期間と偽のフィードバックを使う期間を設けて長期の訓練を実施した。同一被験者内で訓練期間とコントロール期間の能力向上を比較すると、筋電図に影響を及ぼしている脳波の帯域をフィードバックすると、そうでない帯域でのフィードバックと比較して、書字の安定性の向上が大きいことが分かった。 また研究期間全体を通しては、当初の目的であった磁気刺激を使わないで大脳皮質の興奮性を変化させることが、ブレイン・マシン・インターフェース技術また脳波フィードバック技術をもって可能であることを示すことに成功したといえる。そしてジストニアの一種である書痙患者において、このシステムが適用可能であること、そして書字の安定性向上に寄与できることを示した。当該研究は、査読付き原著論文として国際的な評価を受けており、国際学会においても大きな反響を得た。また後続の研究としてすでに本研究を手本とした書痙患者での脳波分析などが他グループでも行われている。上記の点を鑑みて我々の研究はこれまで治療の難しかった患者に新しい治療の選択を与え、生活の質向上に十分に寄与するものであったと言える。
|