研究課題/領域番号 |
25750199
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中嶋 理帆 金沢大学, 保健学系, 助教 (60614865)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 協調運動 / 上肢機能 / 巧緻性 / 評価 |
研究概要 |
協調運動の質的側面(協調運動の要素)の評価に適した課題を検討し,各検査の特徴を明らかにするため,現在協調運動の検査として広く用いられているFinger tapping test (Tapping)とPurdue pegboard test (Purdue)を用いて,下記2つの研究を行った. 研究1:SMAを含む領域の脳腫瘍摘出術を施行した右利き患者9名を対象に,PurdueとTappingの結果を後方視的に調査した.結果,Purdue・tapping共に障害ありが1名,共に異常なしが3名,Purdue異常なし・Tapping障害ありが3名,Purdue 障害あり・Tapping異常なしが2名であった. 研究2:健常右利き成人19名を対象に,研究1と同様の課題を行った.Tappingは,ウェアラブル接触力センサーHapLog(テック技販)を用いて,示指先端にかかる圧とタッピング動作のリズムを計測した.Tapping 1回毎の力の平均値と変動,所要時間と変動を算出した後,PurdueスコアとTappingのパラメーターの相関分析を行ったところ,相関を認めた項目はなかった.また,Purdue スコアにより高得点群と低得点群に分け,Tappingのパラメーターを2群間で比較したところ,力の平均値において,高得点群が低得点群より有意に低かった(p<0.05). 本研究より,協調性の高さと力の調整能力と関連が示された.また,PurdueとTappingは協調運動の異なる要素を測定しており,一方のみでは協調運動障害の有無を正しく検出できない可能性が示唆された.従って,両検査の結果を合わせて用いることにより,協調運動の要素,つまり質的側面を評価できると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
適切な評価法の選択に試行錯誤,また新たな使用機器(HapLog)の導入と信頼性の検討に時間を要したが,実験自体は概ね順調に進展している.しかし,今年度中に学会・論文発表等の成果報告をするには至らなかった.現在,11月の国内学会での発表に向けて準備中である. また,予算の関係から,両手の協調運動について調べることができなかった.協調運動は一肢内の協調,また,両手の協調はどちらも欠かすことができない評価であるため,来年度は,センサーを1本追加購入し(合計2本にする),まず,Tappingにおける両手の協調とPurdueの関係を調べる予定である. また,当初予定していたZebris(現有設備)を用いた三次元動作解析は行わなかった.理由は,選択した課題がTappingであり,力とタイミング・リズムの調整に重点を置いた動作解析の方が三次元での動作解析より有用と考えたこと,また,HapLogは加速度の測定も可能であったことから,Zebrisを用いた測定は行わなかった.
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今後の研究の推進方策 |
1. Purdue とTappingの関係に関するデータを完成:まず,センサーを1本追加購入し,両手の協調運動におけるTappingとPurdueの関係を調べる.Tappingで算出するパラメーターは力の平均の左右差,時間の平均の左右差,左右のタイミングのずれとする.統計解析では,Purdue両手の スコアとTappingパラメーターの相関分析,Purdueの高得点群と低得点群におけるTapping パラメーターの比較を行う.昨年度の左右各々のデータと合わせて,Purdueの全検査 とTappingの関係を完成させる. 2. Tapping課題で評価できる要素を抽出:1の結果より,Tappingは協調運動のどの要素を評価しているかを検討する.なお,Purdueで評価できる要素については,我々の先行研究でペグボードは方向,時間,速さを評価する課題であることを明らかにした(Nakajima, 2013). 3. 観察に基づく評価表の作成:1-2の結果を踏まえ,協調運動の評価として,PurdueとTappingの時間以外のパラメーターを明らかにする.示されたパラメーターから,観察に基づく評価表を作成する.評価項目として,時間,方向,力,タイミング,リズム等が考えられる. 4. 作成した評価表の試用:作成した評価表は,信頼性の予備的検証を行うため,健常成人を対象として試用する.まず,課題を実施する様子をビデオカメラで撮影する.その後,2名の検者が撮影した映像を基に評価基準に従って採点し,2名の点数のκ係数を求める.必要に応じて評価基準を修正し,完成させる.次いで,協調運動障害がある患者に試用し,症状を的確に評価できるかを調べる.
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品が,予定価格より安く入荷されたため. HapLogセンサーの追加購入,研究に必要な消耗品の購入,被験者への謝金,成果発表のための出張旅費等に使用する予定である.
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