研究課題/領域番号 |
25750200
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
久保田 雅史 福井大学, 医学部附属病院, 理学療法士 (60422672)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経頭蓋直流電気刺激 / 頚椎症性脊髄症 / 末梢神経電気刺激 |
研究実績の概要 |
平成26年度では、頚椎症性脊髄症や後縦靭帯骨化症などの脊髄慢性圧迫疾患の除圧術後の症例に対し、頚頭蓋直流電気刺激(tDCS)が感覚機能、運動機能に及ぼす影響を検証した。頸髄慢性圧迫病態は、上肢のしびれを主症状とし、上肢の異常感覚、巧緻性低下、myelopathy handや、下肢の痙性に伴う歩行障害が主な症状であるが、本年度は上肢のしびれ感、機械的感覚閾値、温度覚閾値、握力などに注目し、対側M1への陽極tDCSがこれらにどの程度影響を与えるか検証した。その結果、しびれ感に明らかな変化を認めた症例は8名中1名であり、しびれ感の即時的軽減は得られなかった。一方、機械的感覚閾値や温度覚閾値は即時的に改善する症例が多く、知覚機能に対して即時的効果を認めた。また、タッピングスピードテストも改善する傾向が認められた。 さらに、本年度は末梢神経電気刺激(NMES)と、tDCSの併用効果を健常成人において検証した。NMESは、感覚閾値程度の刺激でも一定時間刺激を与えることによって、それ単独でも皮質脊髄路の興奮性に影響を与える可能性が示唆されている。今回、tDCSとNMESとを併用したところ、陽極tDCSのみと比較して大腿四頭筋の最大等速性筋力や目標筋力を正確に発揮する筋制御能力が高まることが明らかとなった。 これらの研究結果より、tDCS単独でも脊髄慢性圧迫除圧術後の症例の運動、感覚機能を即時的に変化させうるが、tDCSとNMESとの併用はさらにその効果を高めることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
慢性頸髄圧迫に対する除圧術後の機能回復過程の症例に対し、tDCS単独での有効性を検証することは予定通りできた。歩行解析、種々のパフォーマンステストといった感覚運動機能の評価は予定通り実施することができたが、PETやMEP計測は患者にかかる時間的負担が大きく、症例には実施できていない。また、Dual-stimulationに関しては、未だ健常成人での基礎的データを蓄積している段階であり、こちらに関しては来年度に実施する予定である。 研究報告に関しては、査読有国内原著論文が掲載されたとともに、学術集会にて発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究により、tDCS単独による頚椎症性脊髄症の運動機能、知覚機能への影響は検証されつつある。また、健常人におけるtDCS単独とDual stimulationとの違いが明らかとなってきている。今後は健常人のみでなく、頚椎症性脊髄症などの疾患では併用刺激する意味があるかを十分検証していく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の実施件数が予定を下回ったことや、データ計測が完了しておらず、学会発表などが平成27年度へずれこんだため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、実施件数の増加が予想され、消耗品や電極パッドなどに使用する。また、データ解析に必要な環境の構築や、学会発表や論文発表などにかかる費用とする予定である。
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