研究課題/領域番号 |
25750202
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤田 直人 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 講師 (90584178)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 骨格筋 / 再生 / 高気圧・高濃度酸素 / 心疾患 / ミトコンドリア障害 |
研究実績の概要 |
骨格筋の弱化に対する高気圧・高濃度酸素の作用に関して、筋損傷モデルを用いて、その再生に及ぼす影響を検証した。検証の結果、高気圧・高濃度酸素は骨格筋の再生を促進することが明らかになった。その作用機序として、筋損傷に伴う低酸素状態を改善することがマクロファージの遊走の早期化をもたらし、マクロファージ遊走の早期化に伴う抗炎症性サイトカインの作用が筋再生の促進に貢献したと考えられた。筋損傷モデルにおいて、低酸素状態の改善によって筋再生が促進されたことより、心疾患など、低酸素状態を引き起こす他の疾患モデルにおいても同様に、骨格筋の弱化に対して高気圧・高濃度酸素が有効に作用する可能性がある。なお、これらの研究結果は国内における関連学会で発表するとともに、国際誌にて報告した。 また、高気圧・高濃度酸素に関する最適な暴露時間を検討するため、暴露開始30分から24時間における、骨格筋のミトコンドリア新生に関する因子の変化を検証した。検証の結果、ミトコンドリア新生に関わる転写共役因子の発現は曝露開始後1時間で有意に増加することが明らかになった。即時的な作用が暴露開始1時間で生じたことより、筋持久力の低下のようなミトコンドリア障害をターゲットとして高気圧・高濃度酸素を実施する場合、その治療時間は1日1時間程度必要であることが示唆された。なお、これらの研究結果は国内における関連学会で発表するとともに、国際誌へ投稿し、現在は査読中である。 また、モノクロタリンによる右心不全モデルを用いて、心疾患に伴う骨格筋弱化のタイムコースを検証した。これまでのところ、骨格筋のタイプによって萎縮の程度や時期が異なり、その経路も異なることを確認している。このことは高気圧・高濃度酸素による最適な介入開始時期を決定するうえで意義があると思われる。なお、これらの研究結果は関連学会での発表準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高気圧・高濃度酸素が骨格筋の弱化に及ぼす影響に関して、筋損傷モデルでは、その有効性の一部を既に確認した。また、最適な治療条件を検討するうえで、治療開始時期と治療時間に関してはある程度の結果を得ている。しかし、現時点では心疾患モデルに対する治療効果の検証に至っていないため、研究の達成度はやや遅れていると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果より、心疾患に伴う骨格筋弱化のタイムコースは骨格筋のタイプによって異なることが明らかとなっている。今後は、心疾患に伴う骨格筋のミトコンドリア障害に着眼し、高気圧・高濃度酸素による介入効果の検証を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2014年度においては、研究をスムーズに実行するうえで不足した費用の前倒し請求を行った。その際、研究の進行を遅らせないため、金額に余裕をもって申請したために、次年度使用額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
前倒し請求によって次年度使用額が発生したが、3年間の研究計画において余剰が生じたわけではなく、試薬やディスポ類に研究費の多くを使用するという当初の使用計画に変更は生じていない。
|
備考 |
研究成果を報告した学会や雑誌の情報をトップページにて更新している
|