研究課題/領域番号 |
25750206
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
木田 裕之 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70432739)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 運動学習 / AMPA受容体 / グルタミン酸 |
研究概要 |
AMPA受容体を介した興奮性神経伝達は、記憶・学習などの高次脳機能に関与することが知られている。運動野においては、運動学習後に長期にわたりシナプス伝達効率が上昇するLTP(Long term potentiation)が報告されている(Science, 2000)が、そのメカニズムはよく分かっていない。 この点を明らかにするために、本研究では、AMPA受容体に着目し、スライスパッチクランプ法を用いてラット(4週齢)一次運動野II/III層のニューロン活動を記録した。運動学習課題としてローターロッドテスト(1日10試行)を行い、完全に学習が成立した運動2日後、電気生理学的特性の変化を調べ、非学習群と比較した。電流固定法による膜電位測定を行ったところ、学習後には、静止膜電位および活動電位の発火頻度が上昇することが分かった。また電位固定下(-60mV)でM2からの入力線維を電気刺激すると、刺激によって誘発されたAMPA電流は増加し、特に運動1日目にはAMPA/NMDA比の有意な上昇(1.48倍)が観察された。運動2日後には、微小興奮性シナプス後電流(mEPSC)の振幅・頻度は非学習群と比較して有意に上昇した。さらに連続刺激応答の結果(paired pulse ratio)より、シナプス前終末側のグルタミン酸放出確率の増加が確認された。以上より、運動学習成立において、プレ・ポストシナプス両側で学習段階に応じたダイナミックな可塑的変化が起こることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の全体目的は、運動学習に伴うAMPA受容体を介した神経伝達様式を明らかにすることである。特に25年度の目標は1)運動学習モデルの確立、2)電気生理学的手法によるAMPA受容体のシナプスへの移行の評価であった。条件検討の末、ローターロッド試験をモデルとし、パッチクランプ法による電気生理データを取得できた。目標は十分に達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の研究により、AMPA型グルタミン酸受容体局在の評価や、ウエスタンブロット法によるAMPA型受容体の発現変化の検討に注目したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の計画時どおり物品を購入したが、電気生理実験が順調に進んだことにより、予定より低額に抑えられたため、残りは次年度への繰越金とした。 繰越金は、「AMPA型受容体シナプス移行のin vivo阻害による運動学習への影響を検討する実験」のための消耗品に加え、一部を成果発表のための旅費に充てる。
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