研究課題/領域番号 |
25750207
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
菊池 真 札幌医科大学, 医学部, 助教 (20404585)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ミトコンドリア / 疑似虚血 / 塩化コバルト / 神経 / 軸索 / 細胞内輸送 / タイムラプスイメージング |
研究概要 |
ミトコンドリアは細胞内小器官の1つであり、ATP生成の中心的役割を果たし、細胞内カルシウム濃度の調節にも関与している。近年、神経細胞内、特に軸索内のミトコンドリアの異常が種々の神経疾患に関与していることが明らかになっている。また、外的要因による脱髄がミトコンドリアの動態に大きく関与していることも報告されている。本研究は、末梢神経初代培養細胞とウイルスを用いて、軸索内のミトコンドリアを蛍光色素により標識し、塩化コバルトを用いた疑似虚血環境下における、軸索内ミトコンドリアの動態を観察し、疑似低酸素状態が軸索内のミトコンドリアにどのような影響を及ぼすのかを考察することを目的とした。 本年度は、ミトコンドリア標的シグナルと赤色蛍光タンパクをコードする核酸をプラスミドベクター内に組込み、レンチウイルス内に構築した。このウイルスを用いて、実際の末梢神経初代培養細胞へ感染させ、ミトコンドリアのタイムラプスイメージングの取得を行った。予備実験として、種々の濃度の塩化コバルト含有培地で、軸索内のミトコンドリアの動態を観察した。その結果、塩化コバルト濃度が10nMの時にはミトコンドリアの動きは抑制されず、濃度が100nMを超えると、ミトコンドリアの動きは完全に抑制された。軸索内の停留ミトコンドリアは、蛍光顕微鏡下の観察において、大きな変化はみられなかった。 過去の報告では、塩化コバルト濃度が100-200μMの濃度で、種々の細胞応答を観察しているものもあるが、本研究で用いた塩化コバルト濃度はこれらの報告と比較して低濃度であった。 以上のことから、軸索内のミトコンドリアの運搬は低濃度の塩化コバルトでも抑制されることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、米国の研究機関よりレンチウイルス作製用のプラスミドベクター内にミトコンドリア移行シグナルと蛍光色素タンパクをコードした核酸が組込まれたものを供与される予定であったが、Clontech社より、ミトコンドリア移行シグナルと蛍光色素をコードしたプラスミドを購入し、PCR、クローニング等を行い、レンチウイルス内にミトコンドリア移行シグナルと蛍光色素をコードした核酸を構築することができた。また、タイムラプスイメージングを行い、顕微鏡下での軸索内ミトコンドリアの動きを観察することができた。加えて、100nM以上の塩化コバルトにより、軸索内ミトコンドリアの運搬が抑制されることが明らかとなった。 当初の研究計画も、レンチウイルスベクターの作製、神経細胞への感染と観察、塩化コバルトの影響の評価を初年度の研究計画としていたので、おおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
塩化コバルトに暴露されたミトコンドリアの動きを定量的に計測する。また、塩化コバルトの濃度を詳細に変化させ、その過程で、ミトコンドリアの動きに変化がみられるかどうかを観察することを、予定している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
タイムラプスイメージングで用いる機器の導入が、当初の予定よりも遅れたため、培養実験の回数が予定よりも少なかった。そのため、当初予定した、培養に用いる試薬、実験動物などの消耗品費が次年度使用費となった。 培養で使用する実験動物や試薬に充てる予定である。
|