研究課題/領域番号 |
25750207
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
菊池 真 札幌医科大学, 医学部, 助教 (20404585)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 末梢神経 / 培養神経細胞 / 軸索 / コバルト |
研究実績の概要 |
コバルトは重金属であり、ビタミンB12を構成する主要元素であるが、高濃度のコバルトは人体に有害である。近年、コバルトが低酸素誘導因子(hypoxia inducible factor)を誘導することが報告されている。そこで、我々は培養系を用い、末梢神経軸索内のミトコンドリアの動態を観察し、コバルトが軸索内ミトコンドリアにどのような影響を及ぼし、さらに、軸索の変性を引き起こすのかを観察した。 コバルトに暴露する前の軸索内ミトコンドリアの動態をタイムラプスイメージングにて観察し、コバルト濃度が0μM(対照群)、200μM、400μM、600μM、800μMの培養液を用意し、24時間暴露した。その結果、600μM以上で、移動ミトコンドリアの数が有意に減少し、移動ミトコンドリアが完全に抑制された軸索もみられ、800μMでは軸索内ミトコンドリアの移動自体が完全に抑制された。また、軸索の変化を観察するために、免疫組織化学染色法によって、神経線維を染色した。軸索長100μmあたりの腫脹の数を計測したところ、コバルト濃度が600μM以上で優位に腫脹が増えていた。軸索の腫脹は、軸索病変の初期段階であると考えられていることから、コバルトにより、軸索の変性が誘発されたと考えられた。 以上のことから現在のところ、600μM以上のコバルト濃度で、24時間、初代末梢神経培養細胞を暴露すると軸索内のミトコンドリアの移動が抑制され、軸索の腫脹が有意に増加することが分かった。 また、コバルトにより誘導されるHIF1αについても現在解析中であり、今回観察された結果が、疑似低酸素環境の影響なのか、あるいはコバルト自体が直接的に軸索に影響しているのかを観察中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タイムラプスイメージングを取得するための機器設置に時間を要したことが、研究進行状況が遅れている主たる原因である。その後も、機器のトラブルがあり、データの取得自体ができない期間があった。そのため、当該期間内に目標としたデータ数を得ることができなかった。 本研究費による成果の発表は第120回解剖学会総会で発表しているのみであるが、今後、サンプル数を増やすことにより、学術誌への投稿も考えている。よって、更に研究を遂行するため、研究期間の延長を申請し、予定データ数を収集するとともに、成果をまとめることに努めることとした。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、当該機器も安定して使用できるようになり、データの取得自体は問題ない。なので、細胞培養も含めて、データの収集に努め、結果をできるだけ早急に発表する予定である。 加えて、低酸素誘導因子のマーカーであるHIF1αのWestern blottingの解析も行っており、今回得られた結果が疑似低酸素によるものなのか、コバルト自体の影響なのかを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
タイムラプスイメージングを取得する機器の導入が遅れたのが主たる原因である。その後、機器の不具合により、データの取得ができない状態が続いた。 このため、当該期間内に予定していた培養実験をすることができず、目的としたデータ数を収集することができなかった。 よって、培養に関する消耗品費用が予定よりも下回ったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、機器は安定して稼働しており、新年度以降に培養実験を再開する予定である。よって、当該年度に使用できなかった費用は、新年度以降の培養用の消耗品費として使用する予定である。
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