血管内皮機能の維持・改善は、国民の健康維持のみならず医療費の面でも重要な課題である。有酸素性運動は血管内皮機能の改善に有効であるが、超高齢化社会の進展により、運動実施が困難な者も増加しており、運動の代わりとなる介入方法の早期開発が求められている。本研究では、温熱や電気刺激などの物理刺激に対する血流量と血流パターンの変化に着目し、温熱と電気刺激を組み合わせた新しい介入方法が、血管内皮機能に与える影響を明らかにすることを目的とする。
本研究では、30分間の①温熱刺激のみ(温熱条件)、②電気刺激のみ(電気条件)、③温熱と電気刺激の併用(併用条件)、の3種類の試行が、血管内皮機能の指標である「血流依存性血管拡張反応(Flow-mediated dilation: FMD)」に与える影響を比較した。また、皮膚血流計を用いて、介入中の皮膚血流量を測定した。その結果、FMDは温熱条件と電気条件では、介入前と比較して介入後に有意差を認めなかった。一方、 併用条件のFMDは、介入前と比較して介入後に有意に増加を示した。介入肢の皮膚血流量は温熱条件および併用条件において、安静時と比較して介入中に有意に増加した。また、併用条件の皮膚血流量は、温熱条件および電気条件と比較して有意に高値を示した。
温熱刺激および電気刺激は血管内皮機能の改善に有効であるが、臨床においては電気刺激による血圧上昇に注意が必要な者や、感覚鈍麻した者もいることから、各刺激の温度や強度は必要最小限に抑えることが望ましいと考えられる。本研究により、温熱刺激と電気刺激の併用は、皮膚血流量の増加を引き起こすことにより、単独の刺激よりも効果的に血管拡張能を増加させ、血管内皮機能の改善を引き起こすことができる可能性が示された。
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