当該研究は、膝関節屈筋を構成する筋の機能分担について、磁気刺激を用いた新規的な方法を用いて解明することを目的とした。膝関節屈筋を構成する各筋が膝関節屈曲運動にどのように貢献しているかを解明する研究であり、選択的筋疲労条件と磁気刺激を用いて検証する独創的研究である。特に、坐骨神経に対する経皮的磁気刺激を用いて、膝関節屈筋の筋疲労を定量的に評価する方法が新規的である。将来は、高齢者、スポーツ障害症例、脳卒中片麻痺症例を対象とした新規的な治療プログラムを開発するための基盤的研究である。 平成26年度は、昨年度から行っていた磁気刺激を用いて膝関節屈筋を構成する筋の疲労を評価する実験を行った。その結果、対象者により磁気刺激を用いた坐骨神経刺激で評価する方法が有効なグループと、そうではないグループが存在した。また、磁気刺激部位の詳細な検討を行い、各被験者内では再現性が保たれることを確認した。膝関節屈曲力の検討では、磁気刺激により誘発される膝関節屈曲力と随意的な膝関節屈曲力を比較することで、膝関節屈曲力の生理的限界と心理的限界の差異を明らかにすることができる可能性を示した。半腱様筋に選択的筋疲労を誘起した条件では、心理的限界と随意的限界が筋疲労前と変化することから、半腱様筋の一時的な機能低下は膝関節屈曲力の末梢性要因だけでなく、中枢性要因にも関与する可能性が考えられた。本研究の結果から、対象者に限定はあるものの、各個人内では磁気刺激を用いて膝関節屈筋を構成する筋の機能を評価することができる可能性がある。
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