研究課題/領域番号 |
25750212
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
鈴木 智高 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 助教 (00576382)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | hemispheric asymmetry / ipsilateral motor cortex / motor skill learning / motor-evoked potentials / TMS |
研究概要 |
複雑な片手運動時に生じる同側一次運動野興奮性とその左右非対称性が、運動学習によってどう変化するのかを経頭蓋磁気刺激を用いて検討した。運動課題中、著明に同側一次運動野が両側性かつ対称的に興奮していた。系列運動課題を用いた先行研究では、この興奮は左右非対称性に生じると報告されているが、本運動課題はより複雑な運動制御を要する。ゆえに、課題とその難易度に依存して同側一次運動野興奮性は両半球において対称性に生じるものと推察された。 しかし、運動学習後、左の同側一次運動野興奮性のみが有意に減少し、非対称な変化が生じた。さらに、左半球の興奮性においては、課題の上達と関連が無く減少したのに対して、右半球の同側一次運動野興奮性は課題の技能向上に依存して変化する可能性が認められた。左(優位)半球に顕著な同側一次運動野興奮性は、右(非優位)半球からの不十分な抑制によるものと仮定されているが、対称性に生じていた同側一次運動野興奮性が、学習後、右半球では変化せず、左半球では減少したことから、この活動は半球間抑制における優劣とは関連しないものと考えられた。 これまで、左半球は運動学習や運動制御において優位であると仮定されてきた。この運動優位性は片手運動時の同側一次運動野興奮性とも関連しており、運動学習においてより顕著に示されることが示唆された。さらに、左半球の同側一次運動野興奮性は、運動制御において技能向上に依存することなく予測的に減少するのに対して、右半球では課題の上達に連動し、段階的に変容し得ることが示唆された。本研究の結果は、近年注目されている、半球間抑制メカニズムを根拠としたニューロリハビリテーションのエビデンスを高める知見であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度においては一定の成果を出すことができた。詳細なメカニズムを明らかにするためには連発刺激を行う必要がある。しかし、動的な環境下において、先行刺激を一定に調整することは難しい。連発刺激で得られたデータの正確性を高めるためには実験デザインを慎重に検討する必要がある。これに関しては当初の計画より遅れることが想定される。一方で、随意的筋弛緩に関する研究を前倒しして開始し、順調に進展している状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
26年度に計画している随意的筋弛緩における一次運動野の興奮性変化に関する研究が既に開始され、順調に進展している。筋弛緩は筋収縮と同様に運動制御の重要な要素であると考えられるが、先行研究は少ない。さらに、先行研究では一致しない結果が報告されている現状にある。よって、筋弛緩の運動制御メカニズムを明らかにするためには、基本的な条件において、より詳細な分析をする必要があると考えられた。 そこで、随意的筋弛緩前の一次運動野における興奮性変化が最も詳細に分析できる実験デザインをし、データの収集を行っている。26年度も継続して行い、運動課題と経頭蓋磁気刺激の条件を変更して、メカニズムを明らかにするための知見を集積していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
表面筋電図計測に使用する使い捨て電極に関して、今年度は在庫の物を使用し新規に購入しなかったため。 表面筋電図計測に使用する使い捨て電極を購入する予定である。
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