研究課題/領域番号 |
25750215
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
重松 英樹 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30623516)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / ロボットスーツHAL / 生体電位センサ MWATCH-101 / 超急性期リハビリテーション / バイオフィードバック |
研究概要 |
受傷直後から生体電位センサを用いたトレーニングと手術後早期からのリハビリテーション介入は、脊髄麻痺患者の予後を改善する可能性がある。本研究の目的は、脊随不全麻痺患者に対して自立型ロボットスーツHALを用いた超急性期からのシームレスなリハビリテーション介入を行い.その有用性を明らかにすることである。初年度は、本アプローチの適応の可否、および実行可能性の検証を含め、比較的軽度の歩行障害を主訴にした脊随不全麻痺患者に対して積極的にロボットスーツHAL を用いたリハビリテーション介入を試みた。初年度当院にて入院加療した対象症例は4例であった。また1例に対しては生体電位センサを用いたバイオフィードバック・トレーニングをHALを用いたリハビリに移行する前に実施することが出来た。 リハビリテーションの詳細を以下に示す。基本的に手術治療にて脊髄圧迫の解除を行った後、生体電位センサを用いたバイオフィードバック・トレーニングを行い、可及的早期にリハビリテーション病院へ転院の上、HALでのリハビリテーションを開始を行うことを目標とした。HAL適応の4例に対しては、HAL装着治療の前後にAmerical Spinal Injury Association Impairment Scale (ASIA),Functional Independence Measure locomotor (FIM-L),10m 歩行速度を用いて評価を行った。評価項目に関しては現在集計し、統計学的に解析中である。また1例に対し、生体電位センサを用いて早期からのリハビリ導入を行った症例に関して、第51回リハビリテーション医学会にて発表予定である。 本研究は、今後の新たなリハビリテーション方法の開発に関して、特に脊髄不全麻痺患者で歩行障害を主訴とする患者への福音となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)超急性期リハビリテーション介入。対象患者の内1例に対しては生体電位センサを用いたバイオフィードバック・トレーニングをHALを用いたリハビリに移行する前に実施することが出来た。これは非拘束Bluetoothワイヤレス通信筋電センサ(MWATCH-101、和田製作所、愛知県)およびタブレットPC(CF-AX2, パナソニック社)を用いたバイオフィードバック・リハビリテーションであり、生体電位を視覚化できるデバイスを用いた早期筋力トレーニングは、患者に筋肉の活動をダイレクトに視覚的に伝えることができ、目標とする筋に対するリハビリを促進する効果が認められた。本研究成果については代表者が日本リハビリテーション医学会にその効果について報告予定である(平成26年6月、名古屋市、採択)。 2)ロボットスーツHALを用いたリハビリテーションとその適応および実行可能性。当初の計画通り手術治療にて脊髄圧迫の解除を行った後、可及的早期にリハビリテーション病院へ転院の上、HALでのリハビリテーションを開始出来た症例は4例である。これは申請時の目標症例数よりも少ないが、症例選択と適応に関して(即ちHALが適さない症例)の知見を集積するとともに、実行した4例についても順調にデータを蓄積し得た。現時点で明らかになった課題を以下に示す。①HALは、下肢に装着する制約から、低身長患者(150㎝以下)には使用できない。②頚髄損傷での不全麻痺患者では、起立時に低血圧発作が生じて立位を保てない症例が存在した。③上肢の麻痺の程度が重度であればあるほど、安定性を欠き、思うようにリハビリが遂行できない症例が存在した。
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今後の研究の推進方策 |
向後の研究アプローチ。①重度の頚髄損傷患者。重度の頚髄損傷患者は、上肢の筋力低下が大きく、使用時の体幹の安定性を欠くので、ロボットスーツHALの使用が困難であった。従ってこのような頚髄損傷患者に対しては、歩行器ではなく、リフト式の体幹保持器機を併用することで上肢に頼らず立位保持ができるように工夫を行い、ロボットスーツを併用してのリハビリテーションが行える環境を作るように、共同研究施設である奈良県総合リハビリテーションセンター(宮内義純所長、林雅弘部長)と協議・調整を行う。②上肢の筋力低下が軽度でありながら、体幹のバランス不良からの歩行困難な頚髄症の症例。当該症例については手術早期に筋電センサ・バイオフィードバックトレーニングを重点的に行った後に、早期からのロボットスーツ装着の上での歩行訓練をすすめる。③下肢麻痺が中心の胸髄損傷の患者。当該患者については上肢の筋力低下がなく、上肢で体幹の不安定性を補うことができるため、ロボットスーツの使用を積極的に推進する。④腰部脊柱管狭窄症。同様に腰部脊柱管狭窄症による馬尾損傷の症例に関しても、筋力低下からの歩行が困難な症例を多々経験する。脊髄損傷にのみならず、これら腰部脊柱管狭窄症症例に関しても導入をすすめ、より広範な症例を対象にHALを用いたリハビリテーションを推進する。低身長患者への導入については今後の検討を要する。 筋電センサを用いたバイオフィードバック・トレーニングは患者に分かりやすく、有用な方法である。初年度の経験から我々の提案する、筋電センサとロボットスーツHALと組み合わせた超急性期からのシームレスなリハビリテーション介入には、重度の脊髄損傷(頚髄、胸髄)患者もふくめた脊髄損傷患者の治療を飛躍的に向上させる、大きな可能性が見受けられた。以上、初年度に類型化した方針・治療選択を元に次年度も本研究を推進する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、ロボットスーツのレンタル使用料として費用を計上しておりましたが、リハビリのカリキュラムを見直すことで、レンタルせずに本研究を進めることができ、それによって大幅に経費の使用が節約できました。 次年度使用額は補助事業を誠実に遂行した結果生じております。平成26年度に使用することにより研究がさらに進展することが見込まれます。引き続き、臨床研究で用いる消耗品、測定器材の拡充及び情報収集ならびに学術集会発表のための旅費に使用する予定です。
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