本研究は姿勢の改善と体幹前面筋群の促通を目的とした抗力を具備した継手を有する体幹装具Trunk Solution(以下TS)を脳卒中片麻痺者に使用させ,その効果を評価し,片麻痺者に適した使用にTSを改良するとともに評価システムを開発し,臨床応用による実用化を目指すものである.平成25年度~28年度までにTSの改良,評価システムの開発および実際の疾患者を対象とした計測を実施し,ほぼすべての予定は終了していた.しかしながら,30名の脳卒中片麻痺者の歩行のデータ解析を複数の運動学,運動学的パラメータを用いて解析することでより質の高い研究成果が報告できると考え,平成29年度まで研究実施期間を延長した. 本年度中に30名の脳卒中片麻痺者をTSと短下肢装具使用群とダーメンコルセット使用群に15名ずつを無作為に分けて,TS装着による効果を検証するためのデータ解析を行うことができた.結果としてTS群はダーメン群と比較して,歩行の時間距離因子では,歩行速度,ケイデンスが増加した.運動学的パラメータではより骨盤の後傾を防ぐことができるとともに股関節の伸展角度が大きくなっていた.運動力学的パラメータではMstの足関節の底屈モーメントと遊脚期の足関節背屈モーメントが増加した.開発した装具の効果を無作為化比較試験により得られたデータを分析することができたため,より質の高い結果を得ることができた.また作製したTSを追加的に病院に配布して,効果の検証を行うとともに実用化の可能性が高いことも知ることができた.
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