本年度はスポーツパフォーマンス時のACL損傷が発生しやすい動作であるカッティング動作時における筋活動について検討を進めた。特にカッティング動作時における接地方法の違いが膝関節角度と下肢筋活動に与える影響を検討した。後足部接地(RFS)と前足部接地(FFS)の2種類のカッティング動作を行わせ、この時の筋活動を表面筋電図により記録した。また、この時の膝関節角度の変化を3次元動作解析により算出し、筋活動と膝関節角度の関連性を検討した。フォースプレートを筋電図と同期させ、接地直前・直後の筋活動量を算出し、比較検討した。その結果、膝関節最大外反角度においてFFSはRFSに比べて最大外反角度が小さい傾向を認めた。また、接地直前50msにおいてFFSはRFSに比べて腓腹筋(GL)、半腱様筋(ST)、大腿二頭筋(BF)の筋活動量が有意に大きかった。接地直後50msではFFSはRFSに比べてBFとGLの筋活動量が大きく、前脛骨筋(TA)の活動量が小さかった。このことから、FFSによるカッティング動作では、接地前後のハムストリングスの筋活動が高く働くことから、FFSによるカッティング動作はRFSによるカッティング動作に比べ、ACL損傷リスクの低いカッティング動作であることが明らかとなった。本研究では進行方向が60度変化するカッティング動作であったが、今後は様々な方向へのカッティング動作においてもFFSで実施することで、ハムストリングスの活動が高く、ACL損傷のリスクを低減した状況で行われるかを検討していきたいと考える。
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