視線は社会的認知において重要な役割を担うため、視線によって誘発される脳反応を検出することを目的とした。まず、他者の視線変化を自動的に検出する脳内処理過程を反映する誘発脳反応の簡便な導出法を検証した。しかし、簡便な方法での視線方向の変化に対するミスマッチ陰性電位の導出を実施した。この視線方向に特異的なミスマッチ陰性電位は、倒立顔画像によるミスマッチ陰性電位よりも有意に小さいという問題点を確認した。次に視線画像の連続提示によってadaptationを引き起こすことで、視線方向の認知に関連する脳反応の検出に取り組んだ。非注意下において、視線の異なる顔刺激を連続提示することで、顔認知に関連する脳反応であるN170の減衰を検証した。左側方視画像に後続する物画像や倒立顔画像に対する N170では減衰が生じず、顔刺激(正面視と右側方視)のみでN170が減衰した。さらに、その減衰は、視線方向によって異なることが明らかとなった。その減衰は、右側頭領域において有意に認められ、130-170msの潜時で処理されている可能性が示唆された。これらのことから、注意を向けていない他者の視線方向に対する特異的脳反応を検出する可能性が示唆された。
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