研究課題/領域番号 |
25750232
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋学院大学 |
研究代表者 |
城 由起子 名古屋学院大学, リハビリテーション学部, 講師 (30440663)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 疼痛抑制 / 運動 / 脳波 / 自律神経活動 |
研究概要 |
本研究の目的は,慢性痛患者において運動による鎮痛効果が得られない原因を脳波や自律神経活動から明らかにすることである。平成25年度は健常者を対象に単純運動と注意を要する高いスキルを伴う運動による疼痛抑制効果の比較を行った。その結果,高いスキルを伴う運動により注意の指標となる前頭部δ波,θ波,α波の増大を認めるとともに痛覚閾値は上昇(疼痛抑制)した。一方,運動の反復によりスキルが向上するとδ波,θ波,α波は減衰し,痛覚閾値も低下した。 さらに,認知と運動の両要素を含む課題と認知のみ,運動のみの課題による疼痛抑制効果を比較した結果,認知と運動の両要素を含む課題でのみ疼痛抑制効果と前頭部α波,θ波の増大を認めた。以上のことから運動による疼痛抑制には,運動課題への注意の程度が影響していると考えられ,運動に伴う脳活動のうち,前頭前野や前帯状回の活動が関与している可能性が推察されたことは,疼痛マネジメントを目的とした運動方法の設定において意義深い情報であると考える。 また,健常者と慢性頚肩痛有訴者を対象に単純なグリップ運動とグリップ強度を制御させる運動(制御運動)による疼痛抑制効果を比較した結果,健常者では制御運動により痛覚閾値の上昇と交感神経活動の亢進を認めた一方,慢性肩痛有訴者では痛覚閾値も交感神経活動も明らかな変化を示さなかった。このことから,慢性痛有訴者では運動による疼痛抑制効果が得られにくく,その要因の一つとして運動に伴う自律神経活動の変調が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の目的であった健常者における運動による疼痛抑制効果と脳活動および自律神経活動の関係については明らかとなりつつある。また,当初予定した運動方法のみでなく,さまざまな運動方法による実験を進め,単純な運動よりも注意要求の高い運動により疼痛抑制効果は得られやすいことが明らかとなった。さらに,平成26年度の目的であった慢性痛有訴者を対象とした実験において,運動による疼痛抑制効果が得られにくいことを先行研究による情報のみでなく自験例としても確認ができたとともに,その原因として交感神経活動の変調が関与している可能性まで示すことができている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに健常者で確認できた運動による疼痛抑制効果について,慢性痛有訴者を対象に脳波と自律神経活動を指標として検証する。特に,平成25年度の実験結果に基づき運動課題への注意の程度に着目して,注意要求が高い,あるいは被験者の注意を高められるような運動方法を設定するとともに,脳波についても注意の指標とされる前頭部δ波,θ波,後頭部α波の変化に注目し解析を進める。具体的な運動方法としては,前頭前野や前帯状回が賦活するといわれている二重課題や動機づけ課題を用いる予定である。これらの結果から,慢性痛有訴者において運動による疼痛抑制効果が得られにくい原因を明らかにすることを優先し,その上で可能であれば,明らかとなった原因に基づき,慢性痛有訴者においても疼痛抑制効果が得られる運動方法について検討を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費が予定額よりも少額に抑えられた。 研究消耗品(脳波用ペースト,スキンピュア,脳波用アクティブ電極,心電図用電極,電池),物品(脳波用バッテリ),統計解析ソフト(windows8対応)の購入,研究成果報告のための旅費や論文投稿費として使用予定。
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