研究課題/領域番号 |
25750233
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 慎英 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30646980)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歩行分析 / 痙縮 / 膝のこわばり / 内反尖足 / 足クローヌス |
研究実績の概要 |
平成26年度の計画は、平成25年度に確立した三次元トレッドミル歩行分析の計測法を用い、痙縮による歩行中の膝のこわばり、内反尖足、足クローヌスの指標を作成することである。 臨床的観点から各指標を次のように定義した。膝のこわばりは「健常者と対象者の遊脚期の膝関節最大屈曲角度の差を、健常者の最大屈曲角度で除して100を乗じた値」、内反尖足は「足背への法線ベクトルを下腿の前額面に投影し、投影したベクトルと下腿軸が下腿の前額面上で成す角度」、足クローヌスは「初期接地から反対側の離地までの踵マーカの鉛直方向の振幅」とした。 健常者25名と異常歩行が観察された片麻痺者(膝のこわばり30名、内反尖足24名、足クローヌス1名)の三次元トレッドミル歩行分析を実施し、各指標値を算出した。また、歩行分析に習熟した理学療法士3名が、片麻痺者の歩行ビデオを観察し、異常歩行の重症度を採点した。指標の妥当性は、健常者と片麻痺者の指標値の比較、および片麻痺者の指標値と採点結果との相関関係から検討した。 膝のこわばりの指標値は、健常者の最大膝屈曲角度が65°であり、片麻痺者の指標値は65.3±20.4であった。観察による採点結果との順位相関は-0.78(p<.01)と高く、妥当性の高い指標であった。内反尖足の指標値は、健常者の最大角度が遊脚期18.0±4.3°、立脚期17.9±3.7°、片麻痺者の最大角度が遊脚期27.0±9.2°、立脚期21.8±9.6°であった。内反尖足は重症度の採点が未実施のため、指標の妥当性は検討できていない。足クローヌスの指標値は、健常者が0.7±0.1cm、片麻痺者が1.8cmであった。足クローヌスを呈する片麻痺者が1名であったために指標の妥当性は検討できていないが、痙縮改善に伴う指標値の低下は確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の計画は、痙縮による歩行中の膝のこわばり、内反尖足、足クローヌスの指標を作成することであった。膝のこわばりは指標の妥当性を確認できた。内反尖足と足クローヌスは、症例数の集まりが不十分であったため、動画観察による重症度の採点が未実施となり、指標の妥当性の検討が行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、痙縮による歩行障害を呈し、A 型ボツリヌス毒素注射による痙縮治療を実施した中枢神経疾患患者を対象として、治療の効果判定を平成26年度の計画で作成した指標を用いて行うことである。 平成26年度に作成予定であった3つの指標(膝のこわばり、内反尖足、足クローヌス)のうち、膝のこわばりは指標の妥当性が確認できた。内反尖足と足クローヌスの指標は妥当性の検討ができなかった。内反尖足を呈する中枢神経疾患24名の三次元トレッドミル歩行分析を終えているため、動画観察による重症度の採点を早急に実施し、指標の妥当性を検討する予定である。また、足クローヌスを呈する対象が当施設では少なく、今後も増えない可能性があるが、継続的に計測をしていく予定である。 上記、二指標の妥当性検討を進めるとともに、痙縮による異常歩行が観察される中枢神経疾患15名を対象として、A 型ボツリヌス毒素注射前、注射から2週間後、6週間後、12週間後に評価を実施する。評価項目は、安静時の他動的関節可動域、筋力、modified Ashworth scale、平地歩行速度、三次元トレッドミル歩行分析である。ボツリヌス毒素注射による痙縮治療の経時的変化を作成した指標を中心に用いて、歩行中の痙縮の定量的評価法の有用性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
内反尖足と足クローヌスにおいて、動画観察よる重症度の採点が未実施であったため、会議資料の作成費が支出されなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
内反尖足と足クローヌスの動画観察よる重症度の採点を行うための会議資料作成費にあてる。
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