リハビリテーション医療において脳卒中患者の歩行訓練は、視診による歩行分析を行い、その結果を医療者が経験と勘を頼りに解釈し、定性的に行われているのが現状である。本研究の目的は、これまで実施されることが少なかった重度片麻痺を含めた脳卒中片麻痺者の歩行分析を行い、その結果を基に定量的な指標による新たな歩行訓練方法を提案することである。 昨年度までに、回復期リハビリテーション病棟に入院した初発の脳卒中片麻痺患者を対象に歩行分析を実施した。対象者のうち、意識障害または重篤な高次脳機能障害により指示理解が不良な者は除外した。分析装置には3次元動作解析装置であるKinemaTracer(キッセイコムテック社製)を用いて行った。重症度別に指標を作成するために、Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)の麻痺側運動項目の下肢3項目の合計点から0から5点を重度麻痺、6から10点を中等度麻痺、11から15点を軽度麻痺とし、それぞれの麻痺側立脚初期の膝関節屈曲角度と麻痺側遊脚期の最大膝関節屈曲角度を算出した。 本年度はこれらの結果を基にした歩行治療を実施するために、電子ゴニオメータ(バイオメトリクス社製)での信頼性の検討を行った。電子ゴニオメータを大転子と足関節外果を結んだ線上に配置し、中心は大腿骨顆部最大膨大部にあわせて装着し、健常者を対象に歩行時の膝関節角度の検討を行った。健常者をトレッドミル上で0.5、1.0、2.0、3.0km/hの速度で歩行させ、信頼性の確認を行い、歩行治療に使用することが可能であることが確認できた。
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