研究課題/領域番号 |
25750236
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
稲本 陽子 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 講師 (70612547)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 摂食嚥下 / 評価 / 嚥下動態 / マルチスライスCT / 咽頭収縮 |
研究概要 |
摂食嚥下障害患者にとって飲食物が嚥下も咽頭内に残留する「咽頭残留」はリスクの高い病態であり,適切な対応が必要である.これまで嚥下動作を総合的,定量的に嚥下動態を評価する方法が確立されておらず咽頭残留の病態や効果的な訓練法は十分に解明されていなかった.320 列面検出器型 CT(320-ADCT)の開発により嚥下運動の運動学的解析が定量的におこなえるようになった.それにより嚥下中の喉頭閉鎖のメカニズムや嚥下後の咽頭残留の詳細な検討が可能となった. 本研究では,嚥下中の咽頭腔の変化を 320-ADCT とマノメトリーを用いて観察・分析しさらに舌圧にて舌の筋力 を計測し咽頭残留の病態に何が影響するかを検討することである. 嚥下造影検査にて咽頭残留をみとめた球麻痺による嚥下障害患者5名を対象として舌圧計測,マノメトリーによる咽頭・食道圧の計測を実施した.その後320-ADCT を用いて嚥下動態を撮影し,再構成された 0.1 秒間隔の画像を用いて嚥下諸器官の運動開始・終了・持続時間および食塊移動時間を計測した.3D-CT 像を作成し,咽頭腔の変化を諸器官の時間的関係と検討,咽頭残留量を計測し,咽頭腔の容積変化と舌圧との関連をみた. 症例により程度や場所は異なるが,全症例にて咽頭残留をみとめた.マノメトリーでは咽頭から食道の圧変化の異常,圧の低下をみとめ,3D-CT像では不十分な咽頭腔容積変化や食塊輸送と食道入口開大時間のずれをみとめた.舌圧は正常範囲もしくはやや低下していた.これまでの評価法であるマノメトリーや舌圧測定は咽頭圧や舌圧評価ができる点で有用であるが動態を観察することはできない.320-ADCTを組み合わせることで詳細で正確な病態理解につながった.今後は症例を増やし咽頭残留の病態の運動的理解をすすめ,病態に対する訓練法の選択や訓練法作成につなげていくことが課題である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおり,嚥下造影にて咽頭残留をみとめる嚥下障害患者を対象として集められている.症例に対し320-ADCTにて嚥下動態を撮影し,嚥下諸器官の時間的動態や咽頭腔の容積変化など動態評価を詳細に行えている.またマノメトリーや舌圧の計測結果と照合し,咽頭残留の病態を検討できている. 当初は320-ADCTの撮影時にマノメトリーを同期させて計測する予定であったが,技術的な問題で行えていない.一つはCT装置による撮影開始とマノメトリーの計測開始の同期が困難であることである.もう一点は嚥下時にマノメトリーのセンサーが動くことにより生じるモーションアーチファクトにより画像が正確性を欠くことである.そのためマノメトリーの計測はCT撮影とは同期させず計測することで対応している.同一の嚥下を評価はできないが,それぞれ複数回計測することで症状の再現性や信頼性について検討できるため,研究進行の支障にはならないと考える.
|
今後の研究の推進方策 |
嚥下造影検査また嚥下内視鏡検査にて咽頭残留が著明な嚥下障害患者を選定し,対象症例を増やしていく.症例に対し,舌圧測定し,CTにて嚥下動態を観察・評価,CT撮影前もしくは後にマノメトリーにて咽頭・食道圧計測し,咽頭残留の病態について運動的理解をすすめる. ,対象症例のうち,継続してフォロー可能な患者に訓練による咽頭残留の経時的変化の測定を実施する.1回目の計測後に咽頭残留の病態にあわせ,咽頭残留軽減のために適切な嚥下手技を選択し,訓練する.定期的に実施している嚥下造影検査にて症状の変化を評価し,適切な時期に2回目の舌圧測定,CT撮影,マノメトリー計測を実施する.訓練による咽頭残留の軽減の程度を評価し,咽頭残留の予後を明らかにするとともに,咽頭残留に対する訓練法を検討する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
備品として購入した画像サーバー容量増設が見積もりしていた額より安価であったため 今後も320-ADCTにて撮影を続けていき対象者の画像数は増加していく.対象者1名あたりの画像数は,おおよそ6万枚(約30GB)となり大量のデータ数になるため,画像データ保存のために専用の医用画像保管装置の増設を行っていくのに使用する予定である.
|