研究実績の概要 |
摂食嚥下障害は重大所見のひとつである咽頭残留の病態とその対応法を検討することは重要である.咽頭残留の評価には諸器官や食塊の移送の動きを評価する運動学的評価だけでなく運動を起こす・変化させる力の働きを分析する運動力学的評価も必要である.これまで両者の評価から統合的に咽頭残留を評価するシステムが十分に確立されていなかったことで,咽頭残留の病態の理解また訓練法の確立は不十分であった.本研究では咽頭残留の病態理解とその対応法を検討する目的で,嚥下動態の3次元画像抽出化と定量評価を可能とした320列面検出器型CT(320-ADCT)と咽頭・食道の接触圧を計測可能なhigh-resolution manometry (マノメトリー)を用いて咽頭と食道の運動機能を運動学・運動力学の両視点から評価した.さらに舌圧の評価を加え咽頭残留に影響する因子を検討した. 初年度は評価法と分析方法の確立,2014・2015年度は咽頭残留の病態およびその軽減に有効な訓練法を検討することを目的に咽頭残留をみとめた嚥下障害患者を対象に通常嚥下と嚥下手技(メンデルゾーン手技・努力嚥下)を用いた嚥下を320-ADCT,マノメトリー,舌圧でそれぞれ評価した.3つの検査から得られた結果を統合的に分析し,咽頭残留軽減に有効な嚥下手技について検討した. メンデルゾーン手技で食道入口部開大が延長し咽頭残留が軽減する例,努力嚥下で咽頭圧が高まり咽頭残留が軽減する例,いずれの嚥下方法でも咽頭残留が軽減しない例をみとめた.メンデルゾーン手技,努力嚥下のいずれも咽頭残留軽減に有効な手技であるが,手技への精通の必要性また病態にあわせた選択が必要であることが示された.また努力嚥下については健常例での運動学的評価にてメカニズムをより詳細に解明する必要性が示された.
|