研究課題
ギプス固定後慢性痛(CPCP)の末梢誘発因子の検証にあたり,活性酸素除去剤(Tempol,NAC)の局所投与によって痛覚過敏行動が抑制された結果から,ギプス除去に伴う虚血再潅流/酸化ストレス障害がCPCPラットの痛覚過敏行動の末梢誘因の一つであろうと予想し検索を進めた.ギプス固定除去2時間後に優位に増大する固定側後肢に生じる血漿成分の血管外漏出をエバンスブルーで可視化し,漏出局在を検索した.その結果,当初の予想に反して骨格筋における大きな漏出は見られず,主な漏出部位は,浅筋膜,深筋膜,滑膜であった.次にギプス除去による後肢の機械的圧迫からの開放が虚血再潅流障害を引き起こす可能性が予測されたことから,ギプス固定除去後の後肢を固定・採取し,さらに脱灰後,膝関節以遠をパラフィン包埋し,ヘマトキシリン・エオシン染色で組織病理所見を検証した.浅筋膜や筋に僅かなリンパ球の浸潤を認めたが,虚血再潅流障害に見られるような障害細胞とそれらに凝集する多数の好中球浸潤は認められなかった.よって,ギプス固定除去によって再潅流障害が生じる可能性は低いことが示唆された.
4: 遅れている
講座内の人事にともなう研究体制の拡大のため,実験室の大規模改修が長期にわたり行われ,実験環境が制限されたため.
ヘマトキシリン・エオシン染色にて,固定部後肢の組織病理所見を検索した結果,ギプス固定除去によって再潅流障害が生じる可能性は低いことが示唆されたことから,痛みの末梢誘発因子の一つであろう活性酸素の誘導に神経性炎症の可能性が予測される.従って,筋膜,血管内皮を中心に神経ペプチド(CGRP,Substance P)や神経栄養因子(NGF,BDNF),これらのレセプター(Nk1,TrkA/B)の発現などについて,特異抗体による免疫染色法を用いて,これらの分子の局在を調べ,ウエスタンブロッティングやELISAにて量的存在を,また PCR にてメッセージレベルでの量的発現を調べる.DNA/RNAダメージ,タンパク質酸化,脂質過酸化ダメージ,ROS&抗酸化物質アッセイを指標として酸化ストレスの局在と量的変化についても調査したい.またケモカイン(CCL20),サイトカイン(IL-6,IL-1β,TNFα)など増殖因子各種,活性酸素レセプターであるTRPM2の発現変化についても検証を進めて行く.
研究室の大規模改修による長期工事にて研究に進捗に大きな遅れを生じたことろから,遅延課題を次年度に繰り越して実施する.
筋膜,血管内皮を中心に神経ペプチド(CGRP,Substance P)や神経栄養因子(NGF,BDNF),これらのレセプター(Nk1,TrkA/B)の発現などを調査するため特異抗体を購入する.また免疫染色に伴う試薬などの消耗品の購入を行う.ウエスタンブロッティングやELISAについても必要抗体,プレートなどの購入を行う.またPCRにてメッセージレベルでの量的発現を調べため,必要プローブの作成,RNAの抽出キット等の関連消耗品の購入を行う.DNA/RNAダメージ,タンパク質酸化,脂質過酸化ダメージ,ROS&抗酸化物質アッセイを指標として酸化ストレスの局在と量的変化を検索するにあたり,場合によっては専門業者への外部委託も検討している.研究業績の国際誌への出版にむけて,校正業者や出版社への支出も予定している.
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