橈骨遠位端骨折において患者自身が“良くなった”あるいは“悪くなった”と感じる最小の変化(MCID;Minimal Clinically Important Difference)を基準とした場合,その機能的な影響因子は,手関節尺屈(手首を小指側に曲げる運動)と握力であった.また,その効果は術後8週までであり,これまで慣習的に行われてきた約12週間のリハビリテーションの必要性に疑義が生じた.つまり,橈骨遠位端骨折患者に対して運動可動域の拡大や筋力増大などの機能的改善を主眼とするリハビリテーションについての効果を認める期間はより短縮できる可能性が示唆された.しかし,リハビリテーションの期間を検討する際には,機能的指標のみならず患者自身が納得できる機能的あるいは心理的状態に加えて,医療者側も予測しうる最大限の回復を得,さらに患者自身の管理に委ねるといった了解あるいは認識が合致しなければ患者中心型医療とは言えないと考えられた. これらの結果および考察を踏まえ,平成26年度は機能的因子,心理学的因子を加えた前向き研究計画を策定し,倫理申請,後半より他施設研究を開始している.前向き研究においては,医療者および患者双方が納得,了解できるリハビリテーション期間とその影響因子について具体化し,費用対効果を念頭に置いた明確なアウトカム設定についても提案できる予定である.
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