橈骨遠位端骨折に対するリハビリテーションは客観的指標による評価を用いて、おおむね3カ月程度で終了となることが多い.近年では自宅訓練によっても十分な改善を得られると指摘する報告も多く,リハビリテーション期間の適切性に疑義が生じている.これらの実状を踏まえ,患者立脚型評価得点におけるMCID(対象者自身が改善を認識するベースラインからの得点差)を指標としたところ,リハビリテーションの早期開始は支持されるが,その効果は術後8週程度までと考えられた.しかし,リハビリテーションの終了は医療者・患者双方の合意を以て決定づけていることから,平成27年7月より多施設研究を開始し,関節可動域や筋力,心理的状態との関連性について調査した.平成28年3月時点で16組(医療者・患者)が動員され,患者の自己評価は,術後4・8・12週でいずれも“改善した”と認識していたのに対し,その患者の担当者は,術後4・8・12週でそれぞれ,4人,2人,3人が“不変または悪化”と判断しており,乖離が生じていた.またリハビリテーションの必要性について検討したところ, 14例の患者は,術後12週時点で“さらに1ヵ月間程度必要”と認識していたが,担当OTは術後4・8・12週の時点でそれぞれ2人,3人,7人が,さらに1ヵ月間程度の作業療法の継続を“不要”と判断していた.客観的指標として「回内(前腕をひねる動作)」「橈屈(手首を親指側に曲げる動作)」が抽出されたが,対象者数が少なく関連性について断定はできない.医療者側は不要と感じながらも患者側の要望に応えるべく対応しているものと考えられるが,助成期間終了時点でのデータからは関節可動域や筋力,心理状態等の客観的指標との関連はない.さらに,リハビリテーションの継続に対する認識についても機能的指標や心理状態との関連性もなく終了時期に関する客観的因子は存在しない可能性がある.
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