研究実績の概要 |
足底中足骨骨頭部からの感覚情報は立位位置の知覚において重要な役割を担う。閉眼立位において、足底中足骨骨頭部へ高い周波数(20-100Hz)の振動刺激は身体の後方傾斜を生じさせる。この姿勢応答は、身体が前方へ傾斜したという錯覚に対する補償応答であると考えられている。平成26年度には、中足骨骨頭部の最大加圧部位への振動刺激において、比較的低い周波数(10Hz以下)では、補償応答とは逆の前傾応答が生じることを報告した(Naka, Fujiwara, Kiyota, 2015)。この結果は、立位姿勢制御における感覚情報の統合・処理が、その感覚情報の強度によって異なる可能性を示唆する。 加えて、平成26年度は、感覚情報の立位位置の知覚における役割の足底部位よる違いを検討した。平成25年度に確認した中足骨骨頭部下の圧分布と足底接地面に基づき、刺激部位による姿勢応答の違いを、中足骨骨頭部下の最大加圧部位とその前後で比較した。振動子の直径は1.2cm、周波数は60Hzとした。各部位5試行ずつ負荷し、応答の割合を算出した。 健常成人(平均24.1±5.6歳)17名が実験に参加した。足底中足骨骨頭部への振動刺激に対して姿勢応答を示した被験者数は15名であった。残りの2名は、いずれの部位への刺激に対しても応答を示さなかった。以下に15名の結果を示す。最大加圧部位では、後傾応答、前傾応答、応答なしの試行の割合が、それぞれ88.0%、2.7%、9.3%であった。最大加圧部位の1.2cm前方ではそれぞれ66.7%、13.3%、20.0%、1.2cm後方では50.7%、20.0%、29.3%であった。中足骨骨頭部下の最大加圧部位は、その前後の部位と比べて、振動刺激に対して補償応答が生じる割合が高かった。このことから、立位位置知覚において、最大加圧部位が重要な役割を担うことが示唆された。
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