研究課題/領域番号 |
25750257
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中島 康貴 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (00632176)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歩行 / アシスト / リハビリ / 協調 |
研究概要 |
これまで,高齢者の歩行の安定性が低下する要因として,歩行中の上肢の運動,特に体幹の回旋量が減少することが明らかになっている.高齢者が上肢と下肢を連動させるタイミング等の協調的に動作させるコツを失ってしまったため,下肢の振り出しが適切に促進されず,つまずき等の転倒を起こしてしまうことが原因である.そこで,本研究では,上肢と下肢が協調して動作する回旋運動をモデル化し,そのモデルを取り入れたロボットにより,上肢と下肢を結ぶ骨盤動作のみをアシストをすることで,つまずき等の転倒を予防した高齢者の歩行動作を誘導する訓練システムを開発する.本研究では,上肢の運動と下肢の運動を連動させることで,下肢の振り出しを促進し,歩容を改善させる歩行訓練システムの研究を行う.本研究で提案する歩行訓練システムを開発するため,上肢と下肢を連動させるタイミング等の協調的に動作させる運動力学的な条件の工学的な解明,および,そのモデルに基づいて適切に下肢の振り出しをアシストするロボットの開発を実施する.この際,上肢と下肢にそれぞれ機械的なアシストを加え連動させる場合では,システム全体の大型化や使用者の装着の手間等の負担が大きくなる.そこで,本研究では,上肢と下肢を結ぶ骨盤に注目し,上肢の回旋角度の情報に基づいて,骨盤動作のみをアシストすることで,下肢の回旋角度を誘導する手法を開発する. 上記の内容に対して,本年度では,上肢と下肢で協調的な歩行動作を行う事で高齢者の歩行能力を向上させる事を目標とし,協調性の変化が歩行動作へ与える影響の検証を行った.検証を行うために,上肢と下肢の協調性と矢状面方向の床反力との関係をモデル化した.そして,ロボットによって構築したモデルを再現した.実験では,肩と骨盤で逆位相の周期となる回旋運動と同位相の周期となる回旋運動を発生させた状態で歩行を行い,矢状面方向の床反力値を比較した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度では,上肢と下肢で協調的な歩行動作を行う事で高齢者の歩行能力を向上させる事を目標とし,協調性の変化が歩行動作へ与える影響の検証を行った.検証を行うために,上肢と下肢の協調性と矢状面方向の床反力との関係をモデル化した.そして,ロボットによって構築したモデルを再現した.実験では,肩と骨盤で逆位相の周期となる回旋運動と同位相の周期となる回旋運動を発生させた状態で歩行を行い,矢状面方向の床反力値を比較した.その結果,歩行速度が3[km/h]の条件下で左右爪先離床時の床反力のピーク値が有意に減少し,上肢と下肢で協調的な運動を行うことにより,下肢の負担が軽減される事が示された. しかし,昨年度では協調性の変化による影響を有意に受ける歩行速度については求める事は出来なかった.本年度では,歩行速度による影響をさらに検証し,ロボットによる上肢と下肢の協調的な歩行支援を行うロボットの開発を行っていく.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に構築した体幹の回旋運動モデルを取り入れた骨盤動作のアシスト手法の開発とアシストを実現するロボット機構の開発,さらに開発したシステムの評価を行う.アシスト手法の開発では,上肢と下肢の協調を促す骨盤の回旋角度に追従する制御アルゴリズムを構築する.ロボットの開発では,その制御アルゴリズムを導入して上肢と下肢の協調を促す骨盤の回旋運動をアシストする骨盤支持型のロボットを開発する.最後に,開発したシステムの評価として,歩行速度の増加や歩行中の姿勢維持等の歩容の改善の効果を検証する. まず,昨年度構築した上肢と下肢が協調して動作する体幹の回旋運動モデルに基づいて骨盤の回旋角度を制御するアルゴリズムを構築する.次に,提案したアシスト手法により被験者の下肢の振り出しを誘導する骨盤支持型のロボットを開発する.昨年度明らかにした,上肢と下肢を連動させるタイミング等の協調的に動作させる運動力学条件に基づき,ロボットの仕様を再設計し,若年者および高齢者の歩行に対応可能なロボットを開発する.最後に提案した歩行訓練システムの有用性を検証するために,研究協力機関である九大病院病院や藤元早鈴病院において,被験者による試験を長期的に実施する.本システムでは,上肢と下肢が協調する体幹の回旋運動のモデルを用いて骨盤の回旋をアシストするロボットにより歩行訓練を行うことで,歩行速度の増加や歩行中の姿勢維持等の歩容の改善の効果を検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度実施した運動力学条件の工学的解明では,高齢者の歩行中の運動学的パラメータを変化させることによって,体幹の回旋するタイミングや量,どのように変化しているかを計測し,分析する装置が必要であった.そのため,その装置を試作する機器の部材費などを初年度に計画していた.しかし,上肢と下肢が協調して動作する体幹の回旋運動モデルの構築に時間を費やしたため,試作する機器の開発の設計および製作が遅れた.その結果,計測および分析する装置の部材費および加工費が初年度には間に合わず,次年度への使用額が生じた. 本年度は,計測および分析する装置の開発を行う.昨年度に構築した体幹の回旋運動モデルを取り入れた骨盤動作のアシスト手法の開発とアシストを実現するロボット機構の開発,さらに開発したシステムの評価を行う.アシスト手法の開発では,上肢と下肢の協調を促す骨盤の回旋角度に追従する制御アルゴリズムを構築する.ロボットの開発では,その制御アルゴリズムを導入して上肢と下肢の協調を促す骨盤の回旋運動をアシストする骨盤支持型のロボットを開発する.最後に,開発したシステムの評価として,歩行速度の増加や歩行中の姿勢維持等の歩容の改善の効果を検証する.
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