本プロジェクトは平成27年度終了の予定であったが、成果を発表する必要から延長を申請した。平成28年度に計画したのは1.国際誌での成果公刊、2.国際会議等での発表、3.パーキンソン病実験データ拡充、4.MRI 実験、5.脳波実験である。1については心理学分野で定評のある Cognition での公刊を実現した。2については心理学分野で最大規模の国際会議 The 31st International Congress of Psychology にて行動実験の成果を、また日本神経科学会にてパーキンソン病研究の成果を発表した。 3については、すでに平成27年度以前に患者群および年齢一致統制群で Yabe & Goodale (2015) に基づく時間知覚測定を実施し、脳内ドパミン量による時間知覚変動を観察していた。ただしここでは四肢の震顫があっても反応時間を測定できるようマイクに息を吹きかける課題を採用しており、若年者を対象に眼球運動・手運動課題で測定した Yabe & Goodale (2015) との整合性を確認する必要があった。そこで若年群でマイクに息を吹きかける課題を用いた時間知覚測定実験を実施し、健常高齢者の時間知覚が若年群のそれと異なる可能性を示した。健常な加齢においても脳内ドパミンは減少する。若年統制群を加えた比較は患者群対統制群での観察を補強する。 4については安静時撮像により脳内各部位の結合強度を検証し、同一被験者の時間知覚測定結果との対照から時間知覚に関与する結合を見出す(解析中)。この方法は MRI の時間解像度がミリ秒単位の時間知覚研究には低すぎるという問題点を解決する。 5については運動に伴うピーク周波数の変動が運動による脳内時計の変調を誘発するという結果を得つつある。これについては基盤C「大脳基底核はα・β波を介して脳内時計を変速するか」で更に検証する。
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