本研究は異なる様式の両手運動によって感覚野の脳活動が変化するか否かについて検討した. 具体的には,脳磁図(Magnetoencephalography:MEG)を用いて各運動時の体性感覚誘発脳磁場(Somatosensory evoked magnetic fields:SEF)及び運動関連脳磁場(Movement related magnetic fields: MRCF)を記録した.条件として,安静条件,片手運動条件,左右対称条件,左右非対称条件の4条件の比較を行った.いずれの条件の場合も右手の示指に提示された刺激のSEFsを比較した.その結果,仮説の通り安静時に比べて片手運動時,左右対称運動時に一次体性感覚野および二次体性感覚野の活動が増大した.さらに,左右非対称運動時には一次体性感覚野および二次体性感覚野の活動が安静時やその他の運動時に比べて減弱した.一次体性感覚野は刺激の情報量を反映し,二次体性感覚野は刺激に対する注意や運動をモニターする役割を持つことが報告されている.運動を実施する際には運動様式によって運動のしやすさやしにくさを感じることがあり,その運動のしやすさに体性感覚野の活動が関与していることが示唆された.一方,MRCF中の運動準備磁場や運動磁場に関して明瞭に記録されない被験者もあり,現在パラダイムを調整中である.取得済みデータについては既に学会等で発表済みであり,国際誌に投稿予定である.
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