本研究は、思春期から青年期を対象に自然体験プログラムを実践し、自然体験プログラムによる体験者の現実適応(社会的に望まれる態度や行動)と個性化(内的成熟や心理的成長など)へのプロセスを明らかにすることであった。 最終年度である平成27年度は、主となる研究課題3.「自然体験プログラムによる個性化プロセスの事例的検討」について、継続型登山授業を受講した登山初心者を対象として、基礎装備をどのように内的に認識を変化させていくかについて検討を行った。その結果、「悪天候による活動意欲の減衰」や「高負荷遂行による疲労・達成感の増大」といった、登山という身体性を通した体験を繰り返すことで(つまり受動的態度で登山に臨むことの限界を体験)、登山行為への「主体性」が萌芽していることが確認された。しかし、この「主体性の萌芽」は、人の個性化に対して重要な契機になると思われるが、自然体験プログラムが深い次元の個性化(あるいは内的成熟)に、どのように影響を与えているかについてはさらに検討の必要性があると思われる。
|