平成27年度は、前々年度より実施している昭和初期の野外教育に関する資料調査と分析を継続し、書籍を中心として資料を収集する事ができた。特に京都府については、京都市教育会が実践した「林間学校」の記事など、関連する資料を多数収集できた。 次に、これまで蓄積してきた個別実践についての検討結果を基に、昭和初期の野外教育実践について比較史的な検討を行うと共に、この時期の野外教育の総体的な特質を分析した。その結果は以下の様である。 先ず、大正期の野外教育の多くは、身体虚弱児童を対象とする欧米の健康増進型の野外教育をモデルに企図されており、全国的に定型化したプログラムで実施されていた。そして、これら欧米型の野外教育は、昭和初期においても各地域で継承されている。すなわち、大正期から野外教育を積極的した地域では、過去の実践経験がそのまま蓄積され、昭和初期においても依然として健康増進型の野外活動が実践の中核を占め、地域性を活かした活動も多くない状況にあったことが明らかになった。本研究では、大正期に野外教育が隆盛した地域を中心に調査を進めたので、その傾向はより強かったといえる。 次に、京都市や高松市の様に、「御伽会」や「臨地教授」など従来地域で展開されていた土着的な教育活動と、欧米型の野外教育を結びつける形で野外教育の導入がなされた地域もあった。これらの地域では、他の地域と比較して、その目的や内容に地域的要素が強く反映されており、一定の独自性が見られた。以上の分析結果を基に、大正期以降の野外教育受容の様相とその影響についてまとめ、「13.研究発表」欄の論文等を発表した。 また、本研究を通じて、大正期の実践を基盤とした地域よりも、郷土教育を展開するなかで、新たに野外教育に着目した地域を対象とした方が、より特色的な事例を見出すことができることも分かった。この点についての分析は今後の課題とする。
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