研究実績の概要 |
最終年度に実施した研究として,2008年からこれまで継続して国内外の女性車いすバスケットボールアスリートの競技環境とアスリート生活の実相について調査してきた結果について,『障がいのある女性アスリートの挑戦:車椅子バスケットボール生活の実相』と題し,まとめた(2014年7月,柏艪舎978-4-434-19478-8)。さらに車いすバスケットボールの歴史や文化性について,これまで国内では明らかにされてこなかったことから,得られた資料からアメリカにおける車いすバスケットボールの普及や女子車いすバスケットボールの創始について解明した。同時に,競技独自の魅力や価値に迫るためルールの変遷についても明らかにした。 また障がいのある女性アスリートの競技環境の拡充のためには,障がい理解の教育効果が期待されていることが明らかとなり,このために中学校体育理論の授業においてパラリンピックを題材に取り上げる際の基礎的資料として報告した(北海道教育大学紀要教育科学編, 65(1):267-277)。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果については,日本の女性アスリートはオーストラリアやカナダの女性アスリートよりも困難や苦労を感じている点が多く,「練習場所の確保/練習場所までの移動/競技に専念できる環境/シャワーやトイレなどの設備/指導者・競技仲間・情報の不足」を指摘していることがわかった。しかしながら「親の介護との両立/異性との交際や結婚/育児との両立」など,これまで女性の役割と見なされてきた項目に対する困難や苦労は,日本が諸外国よりも高い値を示すものの有意な差が認められるまでには至らなかった。本研究課題で対象とした障がいのある女性アスリートの抱える<障がいがあること>と<女性であること>という“二重の障壁”のうち,<女性であること>に関する“障壁”については,統計上の差異は見られなかった。
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