研究課題/領域番号 |
25750281
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
新海 宏成 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (10581217)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サッカー / インステップキック / ボール供給速度 / ボール速度 / 正確性 |
研究実績の概要 |
前年度は,実験で使用するモーションキャプチャシステムの納品が遅れたために,予定していた「異なる速度で転がるボールに対するキック動作とパフォーマンスの変容の解明」の実験を実施できなかったが,平成26年度にこの実験を完了した. 東北地区大学サッカー1部リーグのチームに所属する男子選手9名を対象とし,静止されたボールのキックと,前方13m先から異なる速度(低速4~5.5m/s,中速6~7.5m/s,高速8~9.5m/sの3条件)で転がってくるボールをサッカーゴールの中心を狙いつつ全力で正面に打ち返すキックについて分析した.申請段階ではゴムバンドを利用したボール供給方法を検討していたが,安定して供給するためにはかなりの熟練を要するため,熟練サッカー選手のキックによる供給に変更し,狙った速度条件のボールを供給することに成功した(低速4.74±0.35m/s,中速6.56±0.49m/s,高速8.57±0.47m/s).なお,同種の先行研究(Fabio et al., 2010)では,静止したボールと転がってくるボールのキックにボール速度や正確性の面で違いがみられなかったことを報告している.これは転がってくるボールの速度が遅すぎて(2.2m/s)課題が容易だったことが問題点として考えられたので,本研究では実際のサッカーの試合で起こりうるより速いボール速度領域での実験を設定した. 的に対する正確性について,9名中8名の被験者においてキックされたボールは右肩上がりの分布を示していた.これは,静止したボールのキックの分布を調査した先行研究(Mizutani et al., 2013)と同様の結果であった.興味深いことに,仮説として考えられたボール供給速度増加と正確性減少のトレードオフは認められず,ゴール中心とゴールライン上でのボール位置との距離は,静止条件と中速および高速条件との間にのみ有意差が認められた(ともにp<.01).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来平成25年度に予定されていた研究を実施することはできたが,本年度実施予定だった「異なる軌道と高さで飛翔するボールに対するボーレキック動作の測定」までは完了することができなかった.年度途中で所属大学が変更になり,それに伴って実験環境が変化してしまったことも遅れを取り戻しきれなかった要因として考えられる. 現在は,実験に必要な機材や協力者(補助学生や被験者)などを整え,ボレーキック研究の予備実験を実施している段階である.予備実験が終了次第,直ちに本実験へと移行していく.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度序盤は,実施が遅れている「異なる軌道と高さで飛翔するボールに対するボーレキック動作の測定」を優先し,7月中を目処に実験の完了を目指す. ボレーキックの実験では,供給されたボールに対する打ち損じによってボールが赤外線カメラに直接当たってしまう可能性が僅かながら生じてしまう.直接の衝突によるカメラの破損を可能な限り回避するため,今後の予備実験の状況によってはカメラを保護するケースを作成することも検討している. 平成26年度に行った研究「異なる速度で転がるボールに対するキック動作とパフォーマンスの変容の解明」の成果は今秋に開催予定の日本トレーニング科学会大会で発表し,併行して論文投稿も行う.これから実施する研究「異なる軌道と高さで飛翔するボールに対するボーレキック動作の測定」の成果は年度末に開催予定の日本フットボール学会大会で発表予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際学会での研究発表を行わなかったために当初の計画よりも旅費の執行が少なくなった.その分をデータ解析に必要なソフトウェアやモーションキャプチャとハイスピードカメラの同期装置の購入などに充てたが,予定していた実験が次年度までずれ込んだこともあり,年度予算を使い切る額には至らなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は以下のような使用を計画している. 【物品費】赤外線カメラケース購入.【旅費】国際フットボール学会出席.日本トレーニング科学会出席.日本フットボール学会出席.【人件費】実験での験者および被験者の雇用.【その他】実験機材輸送費.各種学会大会参加費.論文投稿料.
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