平成27年度は,前年度に実験を実施した「①異なる速度で転がるボールに対するキック動作とパフォーマンスの変容の解明」のデータ分析と成果の公表,ならびに「②異なる軌道と高さで飛翔するボールに対するボレーキック動作の測定」の実験実施とデータ分析を実施した. ①の実験では,前方13mの位置から4つの速度条件(静止,低速,中速,高速)でボールを供給し,同じく前方のゴール中心を狙って全力でボールを蹴り返す課題を課した.その結果,蹴り足のスイング速度とボール速度については低・中・高速条件間で差は認められなかったが,反発係数(インパクト効率の指標)はボール供給速度の増加に伴い低下していく傾向が認められた.また,どの速度条件においても蹴られたボールは右肩上がりの分布を示しており,ゴール左上と右下にボールが飛ぶことは極めて稀であること(左利きの場合は左下と右上)や,供給速度が上がるにつれて正確性(ゴール中心からの距離)が低下する傾向がみられた.これらの結果は,第28回日本トレーニング科学会大会および日本フットボール学会13th Congressにおいて発表され,前者ではトレーニング科学研究賞大賞を受賞する高い評価を得た. ②の実験では,大学男子サッカー選手を対象にキック方向に対して右側方から市販のサッカーマシンを使用して様々な高さのボールを供給し,全力のボレーキックを実施させた.その際の動作をモーションキャプチャシステムとハイスピードカメラで記録し,高さの違いによるパフォーマンスの変容について分析を行った.
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