本研究の目的は,サッカーを事例として,日本におけるスポーツ行為者の性格構造の形成過程をスポーツ組織との関係から明らかにし,諸外国の場合と比較することにより,我が国のスポーツ組織の現状と課題を示すことである. 上記目的を達成するため,本研究の最終年度である平成27年度は,平成25・26年度に実施したドイツ・ブラジルでの調査結果から,サッカー行為者の性格構造と当該国サッカー連盟の構造的関係を明らかにし,日本の場合と比較分析した.その分析及び本研究期間全体を通じて実施した研究から以下のことが明らかとなった. 日本サッカー協会は,教育(学校)制度の影響もあるが,自ら生成した制度を通してサッカー行為者の社会的性格(特に高度化志向)を形成しており,社会的性格を主体的に形成することができるという意味において,サッカー行為者を自立的に組織化しつつあるものとして捉えられる(現状).そして,この現状から導かれる組織的課題は,高度化以外のスポーツに対する志向の価値をいかに強調し,愛好者を愛好者のまま(として)組織化できるような制度的構造をいかに生成していくことができるのかということである.その課題に対して,ドイツ・ブラジルの事例から,日本サッカー協会は,高度化志向であれプレイ志向であれ,同協会に登録する会員のための組織であるという認識を高め,それぞれのニーズに応じていくことと,愛好者に対しては遊びとしてサッカーをする環境(場)を整備する程度にとどめ,むしろ積極的な支援よりも愛好者に自由にサッカーをさせるということが今後求められるようになるのではないかと考えられた. 最後に,本研究成果は,本研究計画でも示したように,市場原理に基づく経営・マネジメント的な組織論が主流を占めている現代のスポーツ科学分野において,スポーツ組織研究における新たな視点の1つを示すものとして重要かつ意義があるものと思われる.
|