研究課題/領域番号 |
25750291
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
榎本 雅之 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (40515946)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アイルランド / ヴィクトリア期 / 近代スポーツ / フットボール / GAA |
研究概要 |
本研究は、近代スポーツ誕生の地であるイギリスに隣接し、政治的に併合下であったアイルランドのスポーツ史を再構成するための基礎的研究として、アイルランドの民衆運動が活気づく1860年代から1880年代にアイルランドで行われた近代スポーツについて検討する。 平成25年度は研究対象時期に存在したクラブのクラブ史を収集した。また、当時どのようなスポーツが行われ、報道されていたかを明らかにするために、Irish Newspaper Archiveに所蔵されている全国紙Freeman's Journalの分析を進めている。さらに、地方史やアイルランドのゴルフ史、クリケット史などの先行研究を収集した。 現在、アイルランドではサッカー、ラグビー、ゲーリック・フットボールの3つの近代フットボールが行われ、これらの参加者や観戦者は民族、宗教、政治、階級など複雑にからみあうアイルランド社会を表象している。本研究の対象時期はサッカーやラグビーがイギリスから伝播し、また、ゲーリック・フットボールが作り上げられる近代フットボールの草創期と重なる。そこで、本研究ではこれら3つのフットボールに焦点を当て、アイルランドへの普及過程を検討することを通して、宗主国と植民地の文化の伝播や抵抗の実相を明らかにする。そのために、平成25年度は高等教育機関ダブリン大学のトリニティ・カレッジのフットボール活動について明らかにした。具体的には、トリニティ・カレッジの図書館で、教授会議事録、大学校友会誌(College Pen)の調査、アイルランドのクリケット年鑑(Handbook of Cricket in Ireland)、トリニティ・カレッジ・フットボールクラブ150年史の分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は基礎史料の収集と分析を行った。アイルランドの近代スポーツ関係史料は順調に収集できている。 当初予定していたアイルランドでの調査で収集することを予定していたFreeman's JournalやSportなどの新聞は、Irish Newspaper ArchiveやBritish Newspaper Archiveなど、webを通して国内でも閲覧できるようになった。そのため、空いた時間を、トリニティ・カレッジの図書館やGaelic Athletic Association(GAA)博物館でフットボールクラブの関連史料やGAA関連史料を収集することができた。また、ダブリン大学のポール・ルース氏と情報交換を行い、1860年代から80年代までのアイルランドの3つのフットボールの関係が、それぞれが全く異なった展開をしているのではなく、民族や宗教、政治信条などの隔たりを超えて、相互に作用しながらアイルランドに定着していくという仮説について議論した。 webのArchiveにより、多くの史料を入手できるようになった。予定より多くの史料を収集したため、全体的な分析に関してはやや遅れている。しかし、これは分析対象が増えたためで、作業の進捗状況は計画通りである。時間はかかるが、より客観的で詳細な検討を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続して、アイルランドスポーツに関連する史料を収集するとともに、同時期のイギリススポーツ史の関係資料を収集し、植民地と宗主国におけるスポーツの伝播や抵抗の過程、普及の差異などを比較検討する。また、Freeman's Journalなどの新聞史料の分析を継続して進める。 アイルランドでの現地調査では、アイルランドスポーツ史研究者との情報交換を行う。平成26年度はコークやティペラリー、キルケニーなど地方の図書館やクラブなどで史料収集を予定している。このことは、ダブリンやベルファストといったイギリスの影響を強く受ける地域とは違ったスポーツの普及過程を見ることができると期待でき、アイルランドスポーツ史を地方からの視点で再構成するという点で重要である。 研究成果の公開という点では、平成25年度の成果を日本体育学会やスポーツ史学会、アイルランドスポーツ史学会など国内外の学会や研究会で発表することを予定している。
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