本年は、前年度の課題として挙げていた、ヒトの動きに連動してバーチャルリアリティ(VR)映像が変化する「インタラクティブシステムの不具合」について着手し、その問題について解決することができた.そこで本来の研究目的である,VR空間を利用した知覚運動結合型システムがアスリートの知覚運動技能の評価に利用できるのか,さらにはアスリートの優れた知覚運動技能の特徴について,以下の2つの研究から明らかにした。 1)知覚運動結合型システムの利用可能性について、VR空間におけるボールインターセプト課題の運動学習に着目して検討をおこなった.実験の結果,短期学習により獲得された運動技能は,VR環境の中でも改善されることが確認され、さらにこうした運動技能は練習環境に依存するとした先行知見の結果を支持した.以上から,本研究で構築した知覚運動結合型システムは,アスリートの知覚運動技能の獲得に耐えうる実験環境であることが示唆された. 2)アスリートの優れた知覚運動技能の特徴について検討した.これまでテニス選手は相手選手の動作特徴を事前に捉えることで,その打球コースを素早く的確に予測する優れた技能を有することが明らかにされている。そこで本研究では,テニスストローク動作のVR映像を呈示刺激として,熟練者の優れた予測技能を支える先行手がかりについて検討した.実験の結果、テニス熟練者は初心者に比べて、相手選手のラケットや腕の遠位情報だけでなく,身体中心付近の近位情報をも利用することが明らかとなった。
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