最終年度は、これまでのフィールドワークを補充ならびにデータ更新するために、追加・補足調査を実施する。とりわけ、センサス資料や役場資料を最新データにアップデートし、実証データに不十分が見られる調査項目には追加・補足調査を実施した。 そのうえで、これまでの研究成果を集約すべく、村田周祐、2016、『空間紛争としての持続的スポーツツーリズム』新曜社を執筆し公刊した。本書の特徴は、「持続的スポーツツーリズム」というテーマ設定にある。現代のスポーツツーリズムはバブル期のゴルフやスキーによるリゾート開発の反省を踏まえ、マラソンやサーフィンによって地域空間を「そのまま」利用する形に変化をとげている。大きな空間改変なく、地域空間を「そのまま」利用することで「環境保全」と「投資抑制」という時代要請を同時に達成しなくてはならないからである。本書は、このオルタナティブなスポーツツーリズムを「持続的スポーツツーリズム」と呼び、ここに照準を置く。なぜなら、「いいこと」であるはずの持続的スポーツツーリズムにもかかわらず、現場から軋轢や問題が報告されはじめたからである。つまり、これまで生業や生活実践に利用されてきた地域空間を「そのまま」スポーツ利用することは、「ここは何のための空間なのか」という問題を引き起こしている。「空間定義の二重化」という「見えない問題」のメカニズムに迫った。
|