27年度は、引き続きフィールドでの調査を実施しつつ、26年度までに調査を実施した選手雇用地域分散型クラブや選手雇用を地域に分散させてはいないが地域コミュニティの支援を受けながら経営を行うクラブを対象に、理論的な側面も加味しながらクラブ経営の分析を行った。 分析から提示された示唆は次の通りである。地域コミュニティの支援を受けているクラブを分析するにあたり、重要な点は、クラブを主体とした経営だけではなく、自治体の政策や制度設計、地域コミュニティの持つ規範や慣習といった要素を加味すること。自治体の政策や制度設計によって、クラブは補助金を獲得し、選手/スタッフの雇用先を確保し、練習会場や試合会場の提供を受けることができる。また、自治体が政策的に支援を表明することによって地域の経済団体や地縁団体から支援を受けやすくなる。地域コミュニティの持つ規範や慣習とは「お互い様の精神」に代表される日常生活に内在するものである。クラブ経営に重要な関わりを持たないと考えられる一方で、クラブの選手が地域で働き、様々な地域の行事に参加し、クラブとして地域活動を展開する中で、醸成される地域住民の「クラブを応援しよう」という気持ちには、こうした規範や慣習が影響を与えている。「お互い様の精神」が強くある地域では、クラブは地域活動を展開することで支援を受けやすくなるだろうし、クラブが様々な活動を地域において行うことで「お互い様の精神」を発揮する場が増えることになる。 選手雇用地域分散型クラブは、経営論の視点、政策論の視点、コミュニティ論の視点をそれぞれ用いながらその成り立ちを分析できる枠組みを構築することが求められることが明らかになり、そのための枠組み構築において、平成27年度の取り組みは、一定の成果を上げることができたと考えている。
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