女性スポーツ選手は、男女に共通するストレス要因以外にも、体型の維持・変化、セクシャルハラスメント、月経など女性特有のストレス要因を抱えている。そして、これらが、ストレス反応の増大や重大な健康問題を引き起こすことが懸念されている。特に、利用可能エネルギー不足、無月経、骨粗鬆症の3主徴は、Female Athlete Triad (FAT)と呼ばれ、予防策を講じる必要性が高いことが指摘されている。申請者は、これまでに、女性スポーツ選手特有のストレス要因を明らかにし、それらとストレス反応との関連を検証してきた。一方、ストレスを適切に対処することで、ストレスを経験する前よりも対処スキルが向上したり、精神的な忍耐性が増したり、人間的成長が促されることも指摘されている。 そこで、本研究では、女性スポーツ選手の有効なストレス対処方法を検討することを目的とした。まず、ストレス対処方法とストレス反応との関連を検討した結果、ストレス体験を「人間的に成長した」、「いい経験をした」などと前向きに捉えることにより、ストレス反応を軽減させる結果が示された。次に、女性スポーツ選手の競技・日常ストレスモデルを構築し、FATの有無による差異を検討した。その結果、FATを発症している選手は、ストレッサーを知覚すると問題解決を後回しにする回避的対処を選択しやすく、そのことによりストレス反応が増大することが明らかにされた。また、FATを発症している場合は、「うまくいかないこともある」と深刻にならないようにすることにより、ストレス反応が軽減することも示された。さらに本研究では、ストレスを経験することで、価値観が肯定的に変容し、自立・自律を促し、ストレス対処能力が強化されるという「ストレス関連成長(Stress-Related Growth)」の内容を明らかにし評価尺度を作成した。
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