研究課題
本年度は、寒冷利尿を誘発させる試行を1試行追加し、合計10例の結果を得た。試行を追加した理由は、寒冷試行1(気温10℃、相対湿度40%、水循環スーツ水温10℃)において10例中6例で深部温(食道温)の低下(0.2℃以上)がみられたからである。そこで寒冷利尿の要因が皮膚温と深部温のいずれの低下によるものなのか明確にさせるため、皮膚温のみを低下させる試行として寒冷試行2(気温25℃、相対湿度40%、水循環スーツ水温10℃)を新たに設定した。つまり被験者には昨年度と同様のプロトコルにて中和温試行(気温25℃、相対湿度40%、水循環スーツ水温34℃)を含む合計3試行を実施させた。そして排尿量および実験前後の体重変化から脱水量を測定し、また、採血により得られたヘモグロビン量およびヘマトクリット値から血漿量の変化率を算出した。その結果、寒冷試行1および寒冷試行2のいずれの試行に於いても中和温試行に比して排尿量が多く、かつ血漿量の変化率が低下していることを示した。そして、これら3試行の後に実施している自転車エルゴメータによる疲労困憊に至るまでの多段階漸増負荷運動の結果からも、同様の結果を示す傾向がみられた。本研究では、寒冷利尿により脱水した水分量と同量の水分を経口摂取にて補給し、その後のパフォーマンスに及ぼす影響についても検討する予定であったが、運動継続時間がいずれの試行においても20分未満であったことから、摂取した水分が吸収されて血漿量に反映する可能性は極めて低いと判断し、それについては検討しなかった。以上、本研究の成果から、運動前の寒冷曝露が寒冷利尿を誘発して血漿量を減少すること、また持久的な運動パフォーマンスを低下することが明らかとなった。さらに、この運動パフォーマンスの低下は、寒冷利尿による脱水というよりその他の要因によるものである可能性が示唆された。
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Biophilia
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Medcine and Science in Sports Exercise
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