研究課題/領域番号 |
25750333
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
坂本 彰宏 順天堂大学, スポーツ健康科学部, ポスドク (70615434)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 呼吸性アルカローシス / 筋疲労 / パフォーマンス |
研究概要 |
繰り返し最大運動では、乳酸の生成が盛んに行われ体内の[H+]が上昇する。H+は無酸素性エネルギー供給や筋の興奮収縮連関を阻害し筋疲労の主な要因となる。また運動中に重度な疲労感を発生させモチベーションを低下させる(中枢疲労)。本研究ではHyperventilation(HV)を運動セット間のインターバル期に行い、HVによる呼吸性アルカローシスがパフォーマンスの低下を軽減するか否かについて検証した。また意図的な呼吸筋活動は、疲労感を紛らわし中枢疲労を軽減すると予想した(Setchenov phenomenon)。HVが興奮収縮連関の阻害と中枢疲労を抑制すると仮定し、最大運動中に観られる筋放電量の低下を軽減するか否かについても検証した。 運動:等速性最大膝伸展運動、片脚⇒60度/秒(12レップス*8セット)、逆脚⇒300度/秒(25レップス*8セット)。セット間インターバル40秒。呼吸条件:CON⇒通常呼吸で回復 vs. HV⇒インターバル後半30秒に渡りHV(60呼吸/分、PETCO2 = 20-25mmHg)。被験者:パワー系アスリート15名。測定項目:ピークトルク、EMG振幅(内・外側広筋)、[La-]、血中pH & PCO2。結果:CONと比較し、HVは血中pHを上昇、PCO2を下降させた。また[La-]を高め解糖系エネルギー供給の亢進を示唆した。ピークトルクは60度/秒において、1st & 4thセット開始直後の値がHVによって向上したが、他のタイムポイント及び300度/秒において有意な差は観られなかった。またHVはEMG振幅の低下を軽減しなかった。考察:本実験は単関節コンセントリック運動であった為、血中pHの低下は7.35程度であった。pH低下が軽度であったことやアスリートを対象としたことで、酸緩衝やモチベーションの維持がHVをしなくとも最適に成されたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度申請書に記載した研究目的は年度内に完了し、海外・国内の学会において報告をした。また、協力研究者と共に論文執筆も進めており投稿直前の状態に仕上がっている。更に、26年度の研究内容の一部も既に遂行しており、15名の被験者が実験を完了している。
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今後の研究の推進方策 |
Hyperventilation(HV)によるパフォーマンス向上効果は、対象とする運動様式や被験者に大きく依存することを想定している。また呼吸の頻度や深さ、ターゲットPETCO2等、至適な方法の解明といった課題を残している。その為、平成26年度ではHVの長さを変更したり、次なる運動様式を用いた再検証を主たる目的とする。 我々の先行研究では、10秒*10セットの最大ペダリング運動(セット間60秒)において、インターバル後半30秒に行うHVが、疲労によるパフォーマンス低下を軽減することを報告した。26年度では同一の運動を対象として、HVの長さを15秒に短縮、もしくは45秒に延長した場合の効果について検証する。尚、この実験内容については既に遂行しており15名の被験者が実験を完了している。傾向としては、HVを15秒もしくは45秒に変更すると、パフォーマンス向上効果の有無が個人間で大きく異なり、全体平均値に有意差が観られない結果となっている。これはHVの至適時間が存在することや、至適時間が個々で異なる事を示している。その理由として、HVを行うに際し深い呼吸でのCO2排出が容易に行える個人と、それが困難で不快感を強く感じる個人が居る為と考える。今後はHVの長さに加え、呼吸頻度や呼吸の深さもHV効果を左右する要因と仮説し研究を発展させる。これを通し、至適なHV法を個々レベルで解明する手掛りを掴む。 また、HVの有効となる運動様式の更なる解明においては、フリーウェイトのレジスタンス運動を対象として実験を行う。単関節・コンセントリック動作のみを行った等速性膝伸展運動では、運動後のアシドーシスが軽度であった為、HVの効果が引き出せなかった。フリーウェイト環境に変更することで、実践的な運動で行えると共にHV検証に適したアシドーシスや中枢疲労を引き起こせると期待している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度では、前年度よりもデータ収集を活発的に行う為、被験者や検者への謝金や消耗品の購入が多く必要となる。また26年度5月に、協力研究者が所属するシドニー大学へ訪問し、26年度研究の遂行や、これまでの研究報告を英語にて論文執筆する為、出張費が必要となる。以上の理由により、25年度に配当された基金を持ち越して使用する。 次年度に持ち越す基金については、シドニー大学への訪問費用、及び年度を跨いで現在遂行している実験の謝金・消耗品の未払い分に使用する。 平成26年度に新たに配当される経費においては、引き続き被験者や検者への謝金、国内・外での学会発表出張費、消耗品の購入を主とし、申請書に計上した内訳に沿って全額使用する予定である。
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