我々は、肥満・耐糖能障害を有する被験者において玄米を用いた食事介入が血管内皮機能を改善し、この改善が介入終了後も持続(レガシーエフェクト)することを報告した。この効果は玄米に多く含まれる食物繊維によるものと推察されるが、レガシーエフェクトのメカニズムについては不明である。そこで、2型糖尿病患者において主食を玄米とした食事が血管内皮機能に及ぼす影響およびその機序について検討した。 外来通院中の2型糖尿病患者を対象とし、主食の種類別に玄米群および白米群を設け、2ヶ月間のランダム化比較試験を実施した。2ヶ月間の介入終了後、両群ともに白米食にて2ヶ月間フォローした。主要評価項目は血管内皮機能の変化、副次評価項目はHbA1c、脂質、酸化ストレス・炎症性マーカー、短鎖脂肪酸の血中レベルおよび腸内フローラの変化とした。 選択基準に合致した2型糖尿病患者117名のうち29名より同意を取得、ドロップアウト1名を除いた28名(玄米群14名、白米群14名)を解析対象とした。2ヶ月の介入期間中、玄米群で食物繊維摂取量が約1.5倍増加した。血管内皮機能は白米群と比較し玄米群で介入後明らかに改善した。また、玄米群にて、腸内フローラの変化を認めるとともに血中の短鎖脂肪酸濃度も有意に上昇した。HbA1c、高感度CRPは玄米群で減少傾向にあるものの両群間に有意な差は認めなかった。さらに、玄米群において血管内皮機能の改善は白米食に戻した4ヶ月においても持続した。しかし、血管内皮機能以外の評価項目は4ヶ月で元のレベルに戻った。 2型糖尿病において、主食を玄米とした食事介入により血管内皮機能は改善した。また、腸内フローラの変化を認め、血中短鎖脂肪酸濃度は増加した。しかし、玄米食による血管内皮機能改善の持続効果について、今回評価した因子のみでは説明できず、さらなる検討が必要と考える。
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