研究課題/領域番号 |
25750352
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山野 恵美 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (40587812)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ストレス / 不安 / 脳神経 / 行動科学 |
研究概要 |
本研究では、脳機能イメージング計測として時間分解能に優れる脳磁図計(MEG;magnetoencephalography)を用いて、持続可能な運動プログラム介入による不安・ストレスの軽減効果を、脳活動の変化により客観的に評価し、その作用機序を解明することを目的とする。 初年度は、まず、本試験で使用する注意バイアスを評価する課題を作成した。不安やストレスの強い者は、否定刺激の素早い検出、または検出した刺激からの注意の解放が困難であることが先行研究で報告されている。このような情報処理に着目した課題をMEG試験を実施するシールドルーム内で適切な時間内に使用できるよう留意し、プログラミングソフトを用いて作成した。内容的には、パソコン画面上に「脅威語」と「中性語」が上下に500 ms の間、対呈示された後、どちらかの単語と同じ位置にドットが呈示され、試験被験者はドットが上下のどちらの位置に呈示されたかの判断をボタン押しで反応する「ドットプローブ課題」である。 次に、7名の被験者を対象に、ドットプローブ課題と合わせて選択的注意機能を評価するストループ課題などの認知機能検査、不安やストレス度、個人内要因として気質・性格を評価する各種質問紙検査も含めた、パイロット試験を実施した。 今後、被験者数を増やして評価課題の妥当性・再現性を確認するとともに、介入プログラムの確立を行い、試験パラダイムが適切かどうかを慎重に検討し、必要に応じて適宜修正・変更していく予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に作成したドットプローブ課題などのパソコンを用いた認知課題、各種質問紙検査を含めたパイロット試験を7名の被験者を対象に実施した。ドットプローブ課題における反応時間は、「中性語」と同じ位置にドットが呈示された場合より、「脅威語」と同じ位置に呈示された場合にボタン押しの反応時間が速いことが認められた。本結果は、当該課題を用いた先行研究の結果と同じであり、被験者は課題遂行時において「中性語」よりも「脅威語」に注意が向いていた、つまり、注意バイアスが認められたことを意味する。 また、State Trait Anxiety Inventory (STAI)を用いて評価した特性不安、気質・性格質問紙を用いて評価した不確実さの恐れと、本課題における「脅威語」呈示の際の反応時間が統計的に有意な負の相関関係があることが認められ、これらの特性が高いほど脅威刺激に対する反応時間が速くなることが示唆された。 初年度では、本試験で使用する課題および質問紙の方向性が確認できた。また、試験実施環境、設備の不具合も特に認められないことから、今回得た結果は、次年度以降の本試験実施において有用であると思われ、初年度の進行状況としてはおおむね良好であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた結果に基づき、本年度はさらに被験者数を増やして評価課題の妥当性・再現性を確認したうえで、試験で使用する課題の確立を行う。また、運動介入プログラムの手法、介入期間、MEGを用いた脳活動の測定から解析手法まで、一連の試験パラダイムを確立する。 本試験では、新規作成のドットプローブ課題などの認知課題遂行時の反応時間、各種質問紙検査や心電図モニタリング、MEGを用いた脳活動の測定を行う。MEGデータは、等価双極子推定法で算出される反応時間、等価双極子局在推定、磁場応答の強度などを確認するとともに、課題中もしくは課題前後の安静閉眼の脳活動を空間フィルター法(BEATS)により解析する。 最終的には、本試験で取得した測定データの包括的解析を行う。具体的には、介入前後の脳活動の変化、生体機能、質問紙による主観評価の変化を比較解析し、介入による不安、ストレス軽減効果を統合的に評価検証し、作用機序を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の試験を新規認知課題を用いたパイロット試験(被験者7名)としたため、当初計画していた謝金額よりも使用金額が少なかったこと、また当初計画していたMEGデータ解析用システムの購入を翌年度に変更したことが、次年度使用額が生じた理由である。 MEGデータを詳細に解析するためのシステムおよび専用解析ソフト、解析データ保存用ディスクなどの消耗品、結果の妥当性を確立するため、さらに被験者を増やして試験を行うことを予定しており、リクルートにかかる費用および実験協力の謝礼金、解剖学的な情報を取得するための磁気共鳴画像検査(MRI)費用、被験者より採取したコルチゾール測定に必要な解析関連のキットおよび消耗品費用が必要である。ほか、印刷費や通信費も試験遂行上、必要な経費に含まれる。 また、本研究分野に関連する学会、研究会における成果発表や有識者との打ち合わせのための旅費、研究成果をまとめた英文誌に投稿するための英文校閲費や投稿費も必要である。
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