研究課題/領域番号 |
25750356
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 英寿 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 特任講師 (10547532)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スカトール / 胆汁酸 / 生活習慣病 / トリプトファン代謝物 / 腸内細菌 |
研究概要 |
近年、我が国では、生活習慣病患者の増加が深刻な社会問題となっているが、その原因の1つとして、食生活の欧米化に伴う高脂肪・高タンパク質食摂取による摂取カロリーの過剰が挙げられている。そのため、エネルギー消費と生活習慣病の発症機構の関係性について非常に注目を集めているが、腸内細菌とその代謝産物との関係性について、その重要性の認識とは相反し、詳細なメカニズムは明らかとなっていない。これまでに、高脂肪食を摂取すると、脂肪を効果的に吸収するために、胆汁酸の分泌量が増加する事が知られている。また、肥満状態においては、糞中の総胆汁酸量の上昇、加えて、腸内細菌叢の構成バランスの変化が報告されている。そこで、高脂肪食摂取に伴う腸内の胆汁酸量の増加が悪玉細菌の割合を増やし、同時に、高タンパク食摂取によって悪玉細菌から産生されるスカトール量が著しく腸内で増加すると予想した。加えて、増加したスカトールが腸から吸収され肝臓に蓄積される事で肝機能に影響を与え、生活習慣病の発症・進展に寄与しているという仮説を立てるに至った。現在までに、以下の様な結果を得ている。(1)スカトール摂取によって、肝臓における胆汁酸合成酵素であるCyp7A1の発現量が上昇していた。(2)Cyp7A1の発現上昇に伴い、スカトール摂取群において糞中胆汁酸量が増加し、特に細胞毒性が高い2次胆汁酸量が顕著に増加していた。(3)HepG2細胞を用いて、スカトールのFXRに対する転写活性を調べたところ、スカトールの濃度依存的にFXRの転写活性は低下していた。 加えてこれまでに、本研究で顕著に上昇したある種の2次胆汁酸が、血管平滑筋細胞の作用する事で動脈硬化の発症及び進展への関与を見出している事から、高脂肪・高タンパク質食摂取による腸内細菌の変動はスカトールの産生量を増加させる事で、生活習慣病の発症に発症に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スカトールは強い糞臭を有しているため、いかに摂食量を落とさずにラットにスカトール添加食を摂取させるのか、その条件検討に非常に時間を有した。
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今後の研究の推進方策 |
ラットの摂食量を変化させず、かつ個体に影響を与えるスカトール量を予備検討より見出し、スカトールが個体に与える影響をいくつか明らかにしている。今後は、スカトールが個体に与える影響をさらに詳細に解析を行っていく事で、腸内環境が悪化した際に産生されるスカトールが肝臓に与える影響について解析を行う。加えて、どのような条件の高脂肪・高タンパク食をラットに摂取させる事で、盲腸内容物または糞中にスカトールが検出されるのか確認を行い、個体への影響についてどの程度の相関関係を見出せるか解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究が当初の予定から遅れたために次年度使用額が生じた。 次年度使用額は昨年度の研究費と合わせ、個体解析に用いるラット、分子生物学試薬(プラスミド精製キット、RNA 抽出試薬、real-time PCR 法試薬関連、制限酵素、DNA 修飾酵素、プロモーター活性測定試薬等)、細胞生物学試薬(細胞培養関連試薬、遺伝子導入試薬、阻害剤、siRNA 等)、タンパク解析試薬(タンパク抽出・精製関連試薬、抗体、ウェスタンブロット法関連試薬、免疫組織染色法関連試薬等)、プラスチック消耗品(チップ、チューブ、細胞培養ディッシュ等)を購入予定である。 また、学会発表における旅費及び論文の校正料や投稿料の計上も行っている。
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