研究課題
近年、我が国では、生活習慣病患者の増加が深刻な社会問題となっているが、その原因の1つとして、食生活の欧米化に伴う高脂肪食摂取による摂取カロリーの過剰が挙げられている。そのため、エネルギー消費と生活習慣病の発症機構の関係性について非常に注目を集めているが、腸内細菌とその代謝産物との関係性について、その重要性の認識とは相反し、詳細なメカニズムは明らかとなっていない。これまでに、高脂肪食を摂取すると、脂肪を効果的に吸収するために、胆汁酸の分泌量が増加する事が知られている。また、肥満状態においては、糞中の総胆汁酸量の上昇、加えて、腸内細菌叢の構成バランスの変化が報告されている。そこで、高脂肪食摂取に伴う腸内の胆汁酸量の上昇が悪玉細菌の割合を増やし、同時に、動物性タンパク質摂取によって悪玉細菌から産生されるスカトール量が著しく腸内で増加すると予想した。加えて、増加したスカトールが腸から吸収され肝臓に蓄積される事で肝機能に影響を与え、生活習慣病の発症・ 進展に寄与しているという仮説を立てるに至った。本年度については、以下の様な結果を得ている。(1)回腸及び門脈において、抱合型胆汁酸であるタウロコール酸量が増加していた。(2)糞中において、二次胆汁酸であるデオキシコール酸とその関連胆汁酸の総量が上昇していた。(3)肝臓及び回腸において、胆汁酸代謝を制御するFXRの標的遺伝子の発現量に変化はなかった。(4)肝臓及び回腸末端において、炎症性サイトカインの1つであるTNFalphaの発現量に変化はなかった。以上から、スカトールは肝臓における胆汁酸合成系遺伝子の発現量と回腸末端及び門脈でのタウロコール酸量を増加させるが、肝臓及び回腸末端では炎症反応が惹起されない事が示唆された。胆汁酸代謝を制御するFXRとその標的遺伝子についての発現量に変化がなかった事から、メカニズムの解明が今後の課題である。
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Journal of Nutritional Science and Vitaminology
巻: 60 ページ: 450-454
http://doi.org/10.3177/jnsv.60.450