研究課題
先行研究において、転写因子Nrf1が抑制的に機能することを薬剤誘導性、肝特異的Nrf1欠失マウスで証明していた。特にNrf1がシスチントランスポーターxCTや脂質代謝酵素群を直接抑制制御し、老化関連疾患の一つである脂肪肝炎の発症に関連することが明確となっていた。本研究は、老化マウスや早期老化モデルマウス(α-Klotho欠失)においてNrf1の発現低下が確認される事実から、老化と細胞内チオール環境の変化、すなわち還元ストレスとの関連を明確にし、Nrf1の転写調節機能を活用して抗老化作用を誘導できないかを検証した。老化マウスやα-Klotho欠失マウスの肝においては、加齢により細胞内グルタチオンの量は減少するものの、酸化型グルタチオンと還元型グルタチオンの量比が還元型の方に偏りを示した。老化による還元ストレス亢進を、Nrf1の発現調節(Nrf1過剰発現マウス)によって改善を試みた。弱年齢のマウスにおいては酸化型・還元型グルタチオンの量比は変化が見られないが、2年齢の老化マウスにおいては、野生型と比較して有意に還元グルタチオンの量比が改善される傾向が観察された。同時に、Nrf1過剰発現マウスにおいて、老化マーカーである、ガラクトシダーゼ染色やタンパク質封入体の形成の減少も確認された。このNrf1の効果を老化モデルマウスであるα-Klotho欠失マウスとNrf1過剰発現マウスとの交配において検証したが、老化誘導分子メカニズムの違いからか、Nrf1の発現上昇によって著効しなかった。Nrf1を過剰発現すると、酸化ストレス応答転写因子であるNrf2の転写活性を抑制する事実から、Nrf1による還元誘導は、加齢によって蓄積するNrf2の過剰なストレス応答を抑制する効果があるのではないかと予想された。現在Nrf1及びNrf2の活性是正による、老化防止方策を個体レベルでの実証に挑んでいる。
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